5S活動で職場を整理し、清潔な状態が維持できるようになった――
そこから次の一歩を踏み出す企業が増えています。
5Sは終わりではなく、カイゼンの出発点です。
しかし、「次に何をすればよいのか」「どう進めれば成果が出るのか」が分からず、
活動が止まってしまう現場も少なくありません。
この記事では、5Sを基礎にしたカイゼン活動へのステップを、
現場が自ら動く仕組みづくりという観点から解説します。
5Sとカイゼン活動の関係
5Sとカイゼンは別々の活動ではなく、連続するプロセスです。
5Sが整備の段階であり、カイゼンが進化の段階。
ここでは両者の関係を3つの視点から整理します。
5Sとカイゼンの関係を整理する前に、5Sそのものの目的や意義を押さえておくと理解が深まります。
👉 5Sとは何か?スタートしやすい初心者向け解説ガイド
① 5Sは「整える」、カイゼンは「変える」
5Sの目的は、モノ・情報・作業を整理整頓し、安定した状態をつくること。
一方、カイゼンの目的は、整った状態をさらに良くしていくことです。
言い換えれば、5Sは基礎を整える活動、カイゼンはその上に価値を積み上げる活動。
どちらが欠けても現場は持続的に成長できません。
② 「見える化」がカイゼンを生み出す
5Sが徹底されると、ムダや異常がはっきり見えるようになります。
棚の乱れ、工具の欠品、清掃で見つかる油漏れ――。
これらは単なる不具合ではなく、改善の“発見点”です。
5Sは、問題を「見える化」する活動。
カイゼンは、その問題を「なくす」活動。
5Sが整っていない職場では、カイゼンは見当違いの方向に進みがちです。
問題の可視化こそ、正しい改善を導く出発点です。
現場のムダや異常に気づくには、整理整頓が欠かせません。
👉 整理整頓から始めよう!2Sで製造現場を効率化
③ 5Sができない現場にカイゼンは根づかない
5Sが形だけになっている職場では、カイゼンは継続しません。
現場が整っていなければ、何を改善すべきかが見えないからです。
結果として「一時的な取り組み」で終わってしまいます。
まず5Sで“土台”を整え、そこからカイゼンで“柱”を立てる。
この順序が逆になると、活動は不安定になります。
5Sはカイゼンの前提条件であり、
整わない現場に進化はない。
5Sからカイゼンに発展させる3つのステップ
5Sはゴールではなく、カイゼンの“入り口”です。
現場で成果を出すためには、5Sをやりっぱなしにせず、
そこから現場が自ら動く段階に移行させる必要があります。
私が支援してきた多くの工場では、この「自走化」の部分で差がつきます。
5Sが“維持活動”で止まる会社と、“改善活動”へと進化する会社――。
その違いは、ステップの踏み方にあります。
ここでは、5Sからカイゼンへと自然に発展させる3つのステップを紹介します。
整理・整頓・清掃を通じて生まれた気づきをどう維持するかは、清潔の考え方がヒントになります。
👉 5Sの清潔とは?清掃との違いと“維持する仕組み”を現場目線で解説
ステップ①:現状を「見える化」し、気づきを生む
5Sを進めるうえで最初に必要なのは、“現状を正確に見える形にする”ことです。
整理・整頓・清掃の目的は「整えること」ではなく、「気づくこと」です。
たとえば、整理を進める中で「なぜこんなに使っていない治具が多いのか」と気づく。
整頓を進めると「この棚の動線は遠回りだ」と見えてくる。
清掃を続けると「ここは油漏れが多い」と異常に気づく。
この“気づき”こそが、カイゼンの出発点です。
5Sはモノを動かす活動ではなく、人の気づきを動かす活動なのです。
ステップ②:小さな改善をチームで積み上げる
次の段階は、見つけたムダや異常を「小さく改善する」ことです。
ここでのポイントは、“すぐにできることからやる”こと。
現場支援の中でよく見るのは、「すぐできるのに、やらない」状態です。
改善のネタが出ても、「承認を待っている」「上が決めないと進まない」と止まってしまう。
これでは改善は続きません。
リーダーは「やってみよう」の一言で背中を押すことが大切です。
改善は完璧を目指すものではなく、試しながら良くしていくもの。
「とりあえずやってみて、駄目なら直そう」――このスピード感が、
カイゼンを“活動”から“習慣”に変えていきます。
また、小さな成功をその場で共有することで、周囲にも波及します。
「○○さんが工夫したこの仕掛け、すごく便利だね」
この一言が、他の人のやる気を生みます。
カイゼンは伝染します。
ステップ③:標準化して、仕組みに落とし込む
最後のステップは、成果を“仕組み”に変えることです。
ここをやらずに終わると、改善は「やった人だけの工夫」で止まってしまいます。
現場でうまくいった改善は、作業標準やチェックリストに反映させましょう。
「改善をルールにする」ことで、誰でも再現できる形になります。
5S活動で整った職場を、変化に強い職場に変えるためには、
この“仕組み化”が欠かせません。
ただし、ここで注意したいのは、“書類化”だけで終わらせないこと。
本当に大切なのは、現場の人が納得して守れる形にすることです。
やらされではなく、自分たちで決めたルールなら続きます。
この3つのステップを丁寧に踏むことで、5Sは単なる整頓活動から、
「現場が自ら気づき、動き、仕組みを作る」活動に変わります。
そしてその状態こそ、カイゼンが文化として根づく始まりなのです。
現場を自ら動かすための仕組みづくり
カイゼン活動を進めるうえで最も大切なのは、現場が自ら動く仕組みを作ることです。
やる気や意識に頼る活動は、必ずどこかで止まります。
一方で、仕組みで支えられた活動は、リーダーが変わっても続きます。
私が支援してきた工場でも、5Sとカイゼンが根づいた現場には共通点があります。
それは、「行動を促す仕組み」「成果を共有する仕組み」「成長を実感できる仕組み」が整っているということです。
現場を動かすには、リーダーの関わり方が重要です。巻き込みと育成のコツを詳しく解説しています。
👉 5Sリーダーの役割とは?現場を動かす指導・巻き込みのコツ
行動を促す仕組みをつくる
人は、「言われてやる」より「誘われて動く」方が長続きします。
行動を促すには、“やりたくなる仕掛け”が必要です。
たとえば、毎週1回の「小改善タイム」を設ける。
たった10分でも、全員が改善テーマを考える時間を確保するだけで、
「考える習慣」が生まれます。
また、改善提案ボードを使って、思いついたアイデアを自由に貼れるようにする。
内容は完璧でなくても構いません。
出すことを評価する仕組みを作ることが、最初の一歩です。
やがて、提案が提案を呼び、チーム全体の改善意識が自然に高まります。
これが、「やらされるカイゼン」から「自ら動くカイゼン」への転換点です。
成果を共有する仕組みをつくる
カイゼンの成果は、見える形で共有することが重要です。
せっかく良い改善をしても、現場で知られていなければ再現されません。
改善前後の写真や、作業時間の変化などを掲示板で共有しましょう。
特に「誰が」「どんな工夫をしたのか」を明記することで、
現場の空気が前向きになります。
改善は、共有されて初めて“組織の財産”になる。
小さな成果でも、「見える」「称える」「真似できる」状態を作ることで、
現場に「自分たちで変えられる」という自信が育ちます。
成長を実感できる仕組みをつくる
カイゼンが続く現場では、個々の成長が見えるようになっています。
“やった人が成長を感じられる”ことが、活動の最大の原動力です。
たとえば、改善を提案した人にプレゼンの機会を与える。
発表することで、自分の工夫が形になり、周囲からの承認を得られます。
また、他の人の工夫を聞くことで、新しい発想が生まれます。
リーダーはこの機会を“場づくり”として設けることが大切です。
会議室での報告ではなく、現場の一角で、
「ここをこう変えました」と実物を見せるスタイルが効果的です。
活動を通じて人が成長し、その成長がまた改善を生む――
この循環ができたとき、カイゼンは仕組みとして動き始めます。
5Sの次に来るのは、「人が仕組みを動かし、仕組みが人を育てる現場」です。
行動・共有・成長の3つの仕組みがそろえば、
カイゼンは一時的な取り組みではなく、現場の文化として定着します。
成功事例に見るカイゼンの共通点
私がこれまで支援してきた多くの中小製造業の中で、
カイゼン活動がしっかりと根づいている会社には、いくつかの共通点があります。
それは、仕組みだけではなく、人と文化の動き方に表れます。
現場が成長するための仕組み化・人材育成の考え方については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
👉 5S活動のコツ!躾を成長に変える仕組み(アイデア)作り
① 「やらされ」ではなく「自分たちで決める」文化
成功している現場ほど、リーダーが指示を出すよりも、
現場のメンバーが自分たちでルールを作り、守る仕組みを持っています。
たとえば、工具の定位置や点検表の内容も「現場で決める」。
その際に大事なのは、“やらせない”こと。
ルールを自分たちで作ると、守ることが「義務」から「誇り」に変わります。
現場の納得感が、活動の継続力を生む。
一方で、「上が決めたからやる」という状態では、
一時的な盛り上がりがあっても長続きしません。
カイゼンは、決めるプロセスも現場に委ねることが鍵です。
② 改善の“見える化”が習慣になっている
カイゼンの成果を掲示・共有する仕組みがある現場は、自然と活気があります。
特に「誰が・何を・どう良くしたか」を明示している会社は、
メンバー同士が刺激を受け合い、前向きな空気が広がります。
私が印象的だったのは、ある工場で「改善写真ボード」を毎月更新していた例です。
小さな改善でも写真つきで貼り出すことで、
「自分たちの努力が目に見える」状態が維持されていました。
これにより、“やる気を可視化する”仕組みが生まれていました。
③ 成果を出すリーダーほど「叱らない」
成功する現場のリーダーは、叱って動かすことをしません。
代わりに、「一緒にやってみよう」「どうすればできるか考えよう」と声をかけます。
この姿勢が、現場の雰囲気を変えます。
ある支援先のリーダーは、毎週の5S点検のたびに、
“できているところ”を3つ見つけて褒め、“改善点”は1つだけ伝えていました。
こうすることで、メンバーの心理的ハードルが下がり、
「次もやろう」という前向きな流れが自然に生まれていました。
リーダーが変わると、現場が変わる。
現場が変わると、成果が変わる。
カイゼンの定着は、制度やツールよりも、
リーダーの関わり方と現場の空気で決まります。
成功している現場には共通して、
「自分たちで決める」「見える化を楽しむ」「叱らずに巻き込む」という3つの空気があります。
これらが揃うと、カイゼンは“仕組み”から“文化”へと変わります。
まとめ:5Sはカイゼンの“入口”であり、組織を変える原点
5Sとカイゼンは切り離された活動ではありません。
5Sで整えた職場は、カイゼンを生み出す“土台”であり、
カイゼンを続ける現場は、5Sをより深く根づかせます。
つまり、両者は循環関係にあります。
整えて終わるのが5Sではなく、
整えたあとに“変えていく”のが本当の5S。
5Sをやりっぱなしにして終わってしまう会社は、
「きれいだけど変わらない」現場で止まります。
一方、5Sからカイゼンへと発展させている会社は、
「きれいで、強い」現場をつくり上げています。
カイゼンとは、決して特別なことではありません。
“気づいたことを少しずつ良くする”という、日常の積み重ねです。
しかし、それを支えるのは仕組みと文化です。
その出発点が5Sなのです。
私はこれまで数多くの現場を見てきましたが、
5Sがしっかりしている会社ほど、人の動きが落ち着いており、
問題が起きても慌てず、チームで解決できる力を持っています。
それは単なる整頓の効果ではなく、自分たちで整え、変え、続ける力が育っているからです。
5Sは現場改善の入口であり、
同時に「組織が変わる原点」でもあります。
整えることで見え、変えることで育ち、続けることで強くなる――。
この流れをつくることが、現場出身の私たちが提供できる最大の価値です。
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