御社は経営理念がありますか?
私は製造業を中心に100社以上の経営支援を行ってきましたが、経営理念を定めていない会社に出会う事が多くあります。
「経営理念は必要ですか?」と聞かれる事も多いですが、「絶対にあった方が良い」とお答えしています。
しかし経営理念は非常に抽象的で、直接的メリットが見えないのが悩みの種です。
いざ作ろうとすると大変なので、なかなか手を付けられない経営者の方が多いようです。

事例を参考に経営理念の作り方を解説していきます。
似た言葉とその違いや、自社で表現するときのおすすめなども紹介します。
私の考えをお話しますので、一部一般的とは違う見解もありますが、中小企業の実態に合わせて考えていますので、参考にしてください。

経営 理念とは

スーツで話をする経営者

経営理念とは「何のために自分達がこの事業を営んでいるのか」という企業の存在意義や使命、信念などを表したもので、企業における基本的価値観の事です。

初心に帰るという言葉がありますが、この初心が企業にとっては経営理念であると考えます。
何かにつまづいた時や、迷った時、チャレンジする時、初心に帰り経営理念に基づいて行動する事が大事です。

会社を立てた時、会社を継いだ時、その時に決意した事が理念である可能性が高いです。

経営理念の目的

利害関係者

経営理念は経営における会社の基本的価値観などをステークホルダーに向けて伝える事で、共感を得るためのものであると考えます。

ステークホルダーとは利害関係者の事です。
当社が経営をし、発展していく事で、この利害関係者にどういった価値を提供していくのか、その基本的姿勢を表現していく事が、経営理念の一つの目的なのです。

一般的なステークホルダー
  • お客様
  • 従業員
  • 協力会社
  • 地域社会(採用・経済的貢献)
  • 銀行
  • 国・政府
  • 地球

経営理念のメリット

merit

大企業では、必ずといっていいほど、経営理念があります。(表現に違いはある。)
利害関係者に共感してもらう目的以外にメリットも存在します。

経営理念のメリットは以下のようなものがあります。

経営理念がある事で意思決定を統一化できる

どんな場面でも経営理念に従えば、意思決定を統一化する事ができます。

経営理念は基本的価値観ですので、何かを決断しなければならない場面には経営理念に従って行動する事となります。

「お金を儲けることより、お客様に喜んでもらう事の方が重要だ」といった価値観を持った会社がお客様の事を考えずに製品づくりをしてしまったら、社内の共感は得られませんし、いざ製品を売り出したとしても、自分達の製品に自信がもてず、うまく売る事ができないはずです。

仮に「お客よりも、儲ける事が重要だ」と考える会社は、クレームも気にせず、売りまくる事となりますし、従業員も売った方が褒められるので、クレーム処理など当たり前といった感覚になるでしょう。

つまり、良くも悪くも経営理念はその会社に根付き、基本的価値観は統一され、意思決定の基準となっていくのです。

経営理念に共感した従業員は長く働いてくれる

その企業で従業員が長く働いてくれるのは、この基本的価値観に共感しているからとも言えます。

明文化しているかどうかは問題ではなく、社長や他の社員の価値観が合うかが重要なのです。
つまり、人がすぐ辞めてしまうのはこの基本的価値観が合わないからという可能性があります。
ある意味では、似た者同士が集めっているから、企業は組織として成り立つのかもしれません。

社長の交代の混乱を低減

社長が変わった時に、現場が混乱するのは、経営者が変わったことで、理念が変わってしまった事によるものでしょう。
「経営理念は簡単に変えるものではない」というのが定説ですが、中小企業は社長が変われば理念が変わります。
だからこそ、引継ぎたい想いや信念は明文化しておくべきでしょう。
ご子息が継いだ時に経営理念に少しでも共感してもらえれば、混乱を最小限に抑えられるかもしれません。

企業理念とは

企業理念と経営理念は違うという考え方が基本です。
経営理念とは経営者の価値観で、企業理念とは企業の価値観であるという考えで、経営理念は経営者が変われば変わるが、企業理念は変わらないといったものです。

中小企業は経営理念で統一がおすすめ

私は、経営理念と企業理念について「中小企業ではどちらも同じである」と考えます。
ほとんどの中小企業では「企業の考え=経営者の考え」であるからです。
信念などは、変わらない事も重要ですが、時代に合わせて変化させていかなければ中小企業は生き残っていけません。

経営理念と企業理念は違うから、現場は両方理解しろと言っても混乱するだけでしょう。
経営理念でも企業理念でも会社がそれを企業の基本的価値観であると定義すれば良いのです。
経営者中心の中小企業では、経営理念で統一する事をおすすめします。

社是とは経営方針を分かりやすくしたもの

社是とは、経営理念に基づいた経営方針や主張を分かりやすく表現したものです。

「当社はこんな会社になりたい」「当社は社会の中でこんな役割を担う」「当社はこんな使命を背負っている」といった理想像、未来像を描いたものが多いです。

社是という言葉では、難しすぎて現場社員達に伝わりません。
経営方針や他の言葉とする事をおすすめします。

経営理念と経営方針(社是)との違い

経営理念は経営者・企業の基本的価値観です。
その価値観に基づき、理想像を表現したものが経営理念です。

経営方針は改めて別の記事で説明します。

企業のビジョン

ビジョンはありたい姿を現すものです。
単順に言えば目標の事ですが、中長期的な意味合いで使われる事が多いです。

私がビジョンの策定支援をするときは5~10年後どうなっていたいかをお聞きしています。
ビジョンを「実現可能な夢」であると捉え、この夢を従業員と共有する事で叶えていきましょう。

ビジョンについては改めて別の記事で説明します。

経営理念は実はすでにある!

経営理念は経営をしていく上での出発点ですので、どの会社にもすでにあるものです。
経営理念を改めて明文化し、現場と共有する事で、経営と現場をつなぐ事が出来ます。

これが私が経営理念は必要だと考える理由です。

そして経営理念から経営方針が生まれ、ビジョンを描き、ビジョン達成のために経営戦略を決めていきます。
すると、基本的価値観を共有した従業員は腑に落ちやすくなり、戦略実行に向けて立ち向かっていく事が出来るようになります。

同じ価値観を持った現場の行動

現場は何かに迷った時に何に従って判断すれば良いのでしょうか?
例えば、ミスをしてしまった場合に「早く工場長に伝える」「自分で修正を試みる」「ミスを隠す」といった選択肢があった場合にどうするでしょうか?
経営理念が共有され、それが現場の行動基準(行動価値観)になっていると対応が変わってきます。

経営理念と現場の行動例
経営理念現場の行動
最高の品質をお客様に提供する早く工場長に伝え品質を守ろうとする
一人一人の成長を大事にし、
お客様により良い価値を提供し続ける
自分で修正を試みる
なしミスを隠すかどうかは本人のモラル次第
3つの選択肢を自分の価値観で判断する

最終的にはその人に持つ価値観・モラルというものが判断基準となりますが、
仕事をしている状態では、会社の価値観を優先します。
なぜならば、その方が会社が求める判断として適切だと理解しているからです。

経営理念通りに現場が行動すれば推進力は高まる!

現場が経営理念に従い行動するという事は、社長が思っているように現場が動いてくれるという事です。

経営理念の良いサイクル例
  1. 経営理念を策定する
  2. 経営理念を共有する
  3. 経営理念が浸透する
  4. 経営理念に従って現場の行動基準が生まれる
  5. 現場が行動基準通りに活動する
  6. 社長は現場を信頼できる
  7. 現場を社員に任せられる
  8. 社長は経営に注力できる
  9. 経営ビジョン・経営戦略を立てる
  10. 事業計画を立てる
  11. 現場が事業計画を理解できる
  12. 事業計画に基づき、現場が実行計画を立てる
  13. 現場が実行計画を行動基準通りに着実に遂行する。

事業承継や何かの区切りに明文化してみよう!

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製造業では事業承継を行ったばかりの会社、事業承継を控えている会社などが多く存在します。
事業承継のタイミングで、現社長が後継者に残したい信念などを明文化してみてはいかがでしょうか?
また、補助金申請時にも理念について考えるタイミングとなるでしょう。
会社の魅力を伝える時に、自社が大事にしている信念・価値観などは良いアピールポイントになるからです。

経営理念は効果が見えにくいが、結果は将来必ず表れる

経営理念は定性的なものです。
数字化出来ないため効果が見えにくいのです。
「良くなった気がする」程度の変化かもしれません。

しかし「良くなった気がする」、そのちょっとした変化を日頃感じるでしょうか?
何かを変えなければ、結果も変わりません。

ちょっと「良くなった気がする」の繰り返しが結果を変えていきます。

製造業の経営理念の事例と特徴

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製造業の経営理念の事例について紹介します。
ここでは、中小企業が参考にしやすいものを取り上げてみます。

ヤマハ

ヤマハでは、フィロソフィーを「企業」「顧客」「品質」「行動」の4つに切り分け表現しています。表現の仕方は「ヤマハウェイ」など独自性があって素晴らしいです。
また、日本語の綺麗さや奥深さを大事にしているようで、「卓越」など単語での表現を使用しています。
これは従業員への浸透を狙っていると思われ、覚えやすい工夫がされているように思います。

ヤマハフィロソフィー
ヤマハフィロソフィーとは、ヤマハグループの企業経営の「軸」となる考え方を体系化し表したものです。

ヤマハフィロソフィーは、「企業理念」、「顧客体験」、「ヤマハクオリティー(品質指針)」、「ヤマハウェイ(行動指針)」の4つにより構成されます。

「企業理念」と「顧客体験」は、グループの存在意義を表す普遍的な内容であり、ヤマハフィロソフィーの『基軸』です。

「ヤマハクオリティー」と「ヤマハウェイ」は、企業理念を具現化するために、グループで働く全ての従業員が、日々の業務の中で拠り所とすべきものであり、ヤマハフィロソフィーの『両輪』を示します。

私たちは、常にこのヤマハフィロソフィーを心のよりどころにしながら、お客様の視点に立ち、期待を超える製品とサービスを生み出すことで、未来に向かって新たな感動と豊かな文化を創りつづけます。

企業理念

感動を・ともに・創る
私たちは、音・音楽を原点に培った
技術と感性で、
新たな感動と豊かな文化を
世界の人々とともに創りつづけます

顧客体験

愉しさ:夢中になれる
美しさ:心惹かれる
確信:自信を持てる
発見:可能性に気づく

ヤマハクオリティー

卓越:期待を超える
本質:核心を突く
革新:常識を打ち破る

ヤマハウェイ

志を抱く 【志】
誠実に取り組む 【誠実】
自らが動く 【自発】
枠を超える 【挑戦】
やり切る 【執着】

引用:ヤマハ株式会社ヤマハフィロソフィーより

デンソー

デンソーでは、「使命・経営の方針・社員の行動」という3つに分けられて表現されています。
使命では、「世界と未来」「新しい価値の想像」「人々の幸福に貢献」といった大きな理想像が表現されています。
経営の方針では、「お客様」「市場」「環境」「企業」の視点で表現されています。
経営の方針を理念の中で表現しているのが特徴で、デンソーの中で理念を自由に捉え表現しているのが良く分かります。
社員の行動では、「大きく発想」「明日に挑戦」「自己を磨き」といった求める社員の形を明確にしています。チャレンジや自己研鑽を奨励している事が見て取れますね。

私たちは「デンソー基本理念」を行動の指針とし、世界中の人々から信頼され、期待される企業であり続けます。

会社の使命

世界と未来をみつめ
新しい価値の創造を通じて
人々の幸福に貢献する

経営の方針

1.魅力ある製品で お客様に満足を提供する
2.変化を先取りし 世界の市場で発展する
3.自然を大切にし 社会と共生する
4.個性を尊重し 活力ある企業をつくる

社員の行動

1.大きく発想し 着実に実行する
2.互いに協力し 明日に挑戦する
3.自己を磨き 信頼に応える

引用:株式会社デンソー基本理念より

アマダ

レーザー加工機やベンディングマシンなどを製造するアマダは「お客様」「社会」「従業員」「企業活動」「環境」の5つに分けて経営理念を表現しています。
シンプルに5つで表現されていて、中小企業も非常に参考になるのではないでしょうか。

①お客さまとともに発展する。
②事業を通じた国際社会への貢献。
③創造と挑戦を実践する人づくり。
④高い倫理観と公正性に基づいた健全な企業活動を行う。
⑤人と地域環境を大切にする。

引用:株式会社アマダ経営理念より

経営理念に正解はない

3つの企業を紹介しましたが、その表現方法は自由である事が分かります。
誰かが言った「経営理念は○○だ」といった事には大した意味はなく、
「当社にとっての経営理念は○○だ」という事の方が重要だと考えます。

中小企業としては、株式会社アマダのシンプルな経営理念が表現しやすいかもしれません。

経営理念の作り方のポイント

point

経営理念に共通するのは「お客様」「社会」「従業員」「企業」「環境」などの視点を持ち、それぞれについて明文化しているという事です。

これらは先にお話した利害関係者の事です。
「品質」についても表現される事がありますが、これは「品質理念」「品質方針」など別で取り上げた方が良いかもしれません。日本の製造業は「品質」がウリですから、品質だけ別の表現をした方が自然だと考えます。

つまり要点としては、経営理念は利害関係者を想定してつくる!という事です。

経営 理念 簡単作成テンプレート

G.F.Consulting経営理念テンプレート
G.F.Consultingオリジナルテンプレート

G.F.Consultingでは経営理念を簡単に作れるテンプレートを用意しました。

お客様・従業員・社会の3つの利害関係者に向けた経営理念を作成できる

どの企業でも共通するお客様・従業員・社会に向けた経営理念を作成できるようにしてあります。

選択式で簡単に作れる!

大企業を中心に100社ほどの経営理念から、良くある言葉を抽出しました。

誰が、誰に、どんな、何を、どうやってといったものに対してリスト設定してあります。
自分達にあった表現を組み合わせる事で経営理念を作る事ができます。

また、リスト以外にも自由に記入する事もできますので、当社だけの表現も可能です。

最終的にコピペが出来るようにしてありますので、それを印刷して従業員に共有したり、
HPで掲げて利害関係者にアピールしたりしていきましょう

メールとお名前だけの入力でダウンロード可能

簡単な入力でのテンプレートをダウンロードできます。
名前とメールアドレスの送信頂くと、ダウンロードページが表示されますので、
是非使ってみてください。
ダウンロードページはこちらから

まとめ

経営理念の目的・メリット・似た言葉との違いなどを解説しました。

G.F.Consultingオリジナルの経営理念作成テンプレートをダウンロードしてお使い頂ければ簡単に経営理念を作る事ができます。

他社の事例なども参考にしながら、自分達ならではの表現で経営理念を完成させ、従業員への浸透や、利害関係者へのアピールをしていきましょう

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G.F.Consulting代表上村正和
G.F.Consulting代表上村正和中小企業診断士・日本生産性本部認定経営コンサルタント・1級販売士

職人一筋、木工加工から精密金属加工までを経験。精密金属加工会社では工場長を務める。現在は、中小製造業を対象に現場が活きる経営のサポートを行っている。コンサルティングを中心にのべ100社の支援実績。「日本の製造業をもう一度世界一にしたい!」という想いで支援を続けている。