カイゼン活動を始めても、「最初は盛り上がったのに、続かない」という声をよく聞きます。
掲示板や提案制度を整えても、気づけば形だけになってしまう――。
現場では、“やりっぱなしのカイゼン”が最も多い失敗パターンです。
一方で、特別な仕組みを持たなくても、当たり前のように改善が続く工場もあります。
この差を生むのは、やる気ではなく仕組みです。
続けるカイゼンに必要なのは、モチベーション管理ではなく、
「続けやすい環境」「共有の仕方」「再始動できる仕組み」。
現場出身の私が支援してきた多くの中小製造業の事例から、
改善を“続ける力”に変える現場づくりのポイントを解説します。
改善の基本となる5Sの整え方や、カイゼンへのつなげ方はこちらの記事で詳しく解説しています。
👉 5Sから始めるカイゼン活動|現場が自ら動く仕組みを作るステップ
改善が続かない現場の共通点
多くの工場で「最初は良かったけど、続かない」という悩みを聞きます。
新しい仕組みを導入しても、月日が経つと活動が止まり、掲示板だけが残ってしまう――。
実は、こうした“失速する現場”には共通する特徴があります。
① 「やる気」に頼っている
活動の初期は、リーダーの熱意や現場のモチベーションで動くことが多いです。
しかし、やる気だけで続く活動はありません。
人は忙しくなれば優先順位を変えますし、リーダーが異動すれば勢いは途切れます。
続かない原因は、やる気が足りないのではなく、“やる気がなくても続く仕組み”がないこと。
現場が自発的に動くように見えても、仕組みが支えていなければ長続きしません。
改善を続けるためには、感情ではなく構造で支える視点が必要です。
5S活動の中で、やる気や意識ではなく仕組みで動かす考え方については、こちらも参考になります。
👉 5Sリーダーの役割とは?現場を動かす指導・巻き込みのコツ
② 「担当任せ」になっている
改善活動が担当者ひとりに依存している会社も多く見られます。
「〇〇さんがやってくれる」「あの人がまとめてくれる」といった状態です。
その担当者が忙しくなると、一気に止まってしまう。
改善はチームで回すものです。
特定の人の努力で支えられているうちは、仕組みではなく属人化です。
“誰かがやる”ではなく、“誰でも回せる”状態をつくることが大切です。
③ 成果を“確認する仕組み”がない
意外に多いのが、「改善したあと、その効果を確認していない」ケースです。
やりっぱなしの状態では、改善の意味が薄れます。
数値化・共有・振り返りの仕組みがなければ、活動は自然に止まってしまいます。
「改善が続く現場」ほど、結果を見て、次を考える習慣がある。
改善はやりきることよりも、振り返ることで深まります。
「改善したあとをどう扱うか」――ここに、続くか止まるかの分かれ目があります。
改善が続く現場にある3つの仕組み
改善活動が続く現場には、共通して3つの仕組みがあります。
それは「動きを絶やさない」「喜びを共有する」「続ける力を育てる」という3つの循環です。
これらは特別な制度ではなく、**日常の中に組み込まれた“仕組みのデザイン”**です。
5Sを基礎に改善を仕組み化するステップについては、こちらの記事でも詳しく説明しています。
👉 5S活動を定着させる3つの仕組み|続ける現場に共通するポイント
ステップ①:小さく始めて「動き」を絶やさない
多くの現場がつまずくのは、「最初から完璧を目指す」ことです。
改善テーマを大きくしすぎると、計画に時間がかかり、最初の一歩が遅れます。
続けるためには、小さく始める勇気が必要です。
たとえば、
- 10分で終わる改善をチームで1つ決める
- 改善テーマを「使いづらい」「探しづらい」など身近な視点で考える
- まずは“できた”を実感できるスピードで動く
小さな動きを続けることで、改善の“リズム”が生まれます。
このリズムこそが、活動を止めない最初の仕組みです。
改善は勢いで始まり、仕組みで続く。
ステップ②:成果を共有し「喜び」を見える化する
改善が続く現場では、「うまくいったこと」を見える形で共有しています。
掲示板やミーティングでの共有はもちろん、**その場での“称賛”**が最も効果的です。
私の支援先でも、「これ便利だね」「ありがとう」と声をかける文化が根づくと、
改善のスピードが一気に上がります。
人は承認されると行動が強化される。
だからこそ、称賛も仕組みの一部として設計すべきなのです。
また、改善前後の写真や、作業時間の変化などを掲示することで、
「やった結果」が一目で分かるようになります。
この“見える化”が、現場のモチベーションを静かに支えます。
ステップ③:仕組み化して「続ける力」を育てる
最後に重要なのは、改善を仕組みに落とし込むことです。
これは、形式的なルール化ではなく、“守りたくなる形”にすること。
たとえば、
- 改善提案を月1で振り返る時間を固定する
- 成果を記録して共有フォルダで蓄積する
- 良い事例を新人教育に活用する
このように、改善を日常業務の一部として埋め込むことで、
活動は人ではなく仕組みで回り始めます。
リーダーが変わっても続く現場は、この“仕組みの自走化”ができています。
続く現場は、続ける仕組みを持っている。
継続を支えるリーダーの役割
どれだけ良い仕組みを作っても、動かすのは人です。
そして、現場を動かし続けるための最大の要は、リーダーの関わり方にあります。
ここでは、カイゼンを“続ける文化”に変えるためのリーダーの3つの視点を紹介します。
リーダーが関わる姿勢や、現場を巻き込むためのマネジメント視点は以下の記事が参考になります。
👉 5S活動のコツ!躾を成長に変える仕組み(アイデア)作り
① 成果を責めず、行動を称える
多くのリーダーが陥るのは、「成果で評価してしまう」ことです。
「やったけど変わらなかった」「数値が改善しなかった」という理由で、
せっかくの取り組みが否定されてしまう。
しかし、続けるために大切なのは、“やってみた行動そのもの”を認めることです。
結果が出なかったとしても、動いた事実を称える。
そうすることで、現場の人は「次もやってみよう」と思えるようになります。
私が支援している現場でも、リーダーが「やってくれてありがとう」と一言かけるだけで、
改善提案の数が倍以上に増えた例があります。
リーダーの一言が、現場を継続させる原動力になります。
続く現場のリーダーは、叱るより“認める”。
② 継続のルールは「守らせる」より「守りたくなる」
リーダーの役割は、ルールを作ることではなく、“守りたくなるルール”にすることです。
多くの現場で「決めたけど続かないルール」が生まれるのは、
内容が現場に合っていないからです。
たとえば、改善提案書のフォーマットが複雑すぎて書けない、
会議が長くて時間を取られる――これでは続くはずがありません。
成功している現場ほど、ルールを簡素化しています。
「書く欄を一つにする」「掲示板で写真だけ貼る」など、
“やりやすさ”が続けるための最大の仕組みです。
自由項目だと書けないという人が多い場合では、逆に項目を分解して、細かくしてあげることで、書きやすくすることもあります。
これは、会社ごとに変わる部分でもありますので、目的を失わないように工夫をすることが重要です。
継続を生むのは、ルールの厳しさではなく、使いやすさ。
③ 「止まったときに再始動できる現場」を作る
どんなにうまくいっている現場でも、活動が一時的に止まることはあります。
繁忙期・人事異動・トラブル――。
そのときに再び動き出せるかどうかが、本当の“定着力”です。
再始動できる現場は、仕組みを可視化しているのが特徴です。
掲示板やチェックリスト、共有ファイルなど、誰が見ても「今どこまでやっているか」が分かる状態。
これがあるだけで、「止まっていたら再開しよう」という流れが生まれます。
また、リーダー自身が「止まることを悪としない」姿勢を持つことも重要です。
活動が止まっても、責めずに再開を支える。
それが“続ける文化”の根っこになります。
実例から学ぶ“続く現場”の特徴
カイゼン活動を継続できている現場には、共通した“空気”と“仕組み”があります。
ここでは、私が支援してきた中小製造業の中で特に成果を上げている3つの現場事例を紹介します。
① 週1回・10分の小改善を続ける工場
ある精密部品メーカーでは、毎週月曜日の朝礼後に「10分カイゼンタイム」を設けています。
テーマは自由で、誰でも提案できる形式。
リーダーが指名するのではなく、メンバーが順番で発表するのがルールです。
10分という短い時間でも、継続することで変化が見えてきます。
「これ、前に誰かが改善してたよね」「うちも真似してみよう」――そんな会話が自然に生まれます。
時間を決めて“やる場を固定する”ことが、最大の継続装置になっています。
続く現場ほど、“やる時間を決めている”。
② 成果を壁一面に掲示して共有する現場
別の金属加工工場では、事務所横の掲示スペースに「カイゼンギャラリー」を設置しています。
写真1枚、コメント1行ずつというシンプルなフォーマット。
「自由項目だと書けない人が多い」という現場特性を踏まえ、
逆に項目を細かく分けて書きやすくする工夫を取り入れました。
たとえば、
- Before/After の写真を並べる欄を明確化
- 気づき・効果・次の一手を一行ずつ書く形式
- 「担当者名」は任意(心理的負担を減らす)
このように細かく区切ることで、誰でも書けるようになり、投稿数が倍に増えました。
この会社では、「書けない人を責めるのではなく、書ける仕組みを作る」ことで継続を実現しています。
継続は努力ではなく、設計で生まれる。
③ 改善を“評価制度”に組み込んだ会社
ある樹脂成形メーカーでは、改善提案を評価の一部に組み込んでいます。
といっても、点数化やノルマではなく、
「どんな気づきを出したか」「チームにどんな影響を与えたか」を評価の対象としています。
これにより、社員一人ひとりが「評価されるからやる」ではなく、
「自分の成長のためにやる」という意識に変わっていきました。
改善活動が人材育成と直結することで、活動は自然と続くようになります。
続く現場は、改善を“評価”ではなく“成長”として扱う。
まとめ:改善を続ける仕組みは、現場の成長そのもの
改善が続かない原因は、やる気でも人でもなく、仕組みの欠落にあります。
一方で、改善が続く現場は、特別なことをしているわけではありません。
日常の中に「続ける仕組み」を組み込んでいるだけです。
5Sやカイゼンは、一度の成果で終わるものではなく、
**繰り返すことで現場力を高める“習慣”**です。
そのためには、やる気を支える仕組み、仕組みを動かすリーダー、
そしてそれを育てる文化――この3つがそろっていることが大切です。
続けることが、成長そのもの。
仕組みが整えば、人は動きやすくなり、
人が動けば、仕組みはさらに磨かれていきます。
この循環ができたとき、現場は「活動する現場」から「成長する現場」へと変わります。
私が現場支援を通じて感じるのは、
改善の本当の価値は“成果”ではなく、“続ける力”にあります。
続ける仕組みを作り、動きを絶やさず、再始動できる現場をつくる――。
それが、持続的に成長し続ける企業の条件です。
5Sやカイゼンを通して“続ける現場”を作るシリーズ記事はこちら。
👉 5Sの清掃とは?「掃除」との違いと現場での効果的な進め方を徹底解説
👉 5Sの清潔とは?清掃との違いと“維持する仕組み”を現場目線で解説


