5S活動において「清掃」はよく実践されますが、「清潔」との違いが曖昧なままになっている現場は少なくありません。
清掃が“きれいにする行動”であるのに対し、清潔は“その状態を維持する仕組み”を指します。
つまり、清掃を一時的な活動で終わらせず、誰が行っても同じ状態を保てるようにするのが清潔の目的です。
この記事では、清掃と清潔の違いを整理し、清潔を維持するためのルール化・標準化・見える化のポイントを、現場目線で解説します。
清潔とは?清掃との違いを理解する
5Sの中で「清潔」は、よく「清掃と同じではないのか」と混同されがちです。
しかし、清掃は“きれいにする行動”であり、清潔は“きれいな状態を維持する仕組み”を意味します。
つまり、清掃が「今日の行動」であるのに対して、清潔は「明日も同じ状態を保つための仕組み」です。
この違いを理解することが、5Sを定着させるための第一歩となります。
清掃は「行動」、清潔は「状態」
清掃とは、汚れを取り除き、異常を見つけるための“作業”です。
それに対して清潔は、清掃で整えた状態を「保つ」ことを目的としています。
たとえば、毎日掃除しても、翌日に同じ汚れが再発しているなら、清潔は維持できていません。
清潔とは「汚れが発生しないようにする」「再び散らからないようにする」ための状態管理です。
現場で言えば、切粉が床に溜まりやすい場所にカバーを設けたり、
油漏れが発生しないようホースの経路を見直したりすることが“清潔”の取り組みです。
清掃=除去、清潔=予防と整理すると分かりやすいでしょう。
清潔の目的は“維持と安定”にある
清潔の目的は、常に一定の状態を維持し、作業環境を安定させることです。
きれいな状態が保たれていれば、製品品質や安全性も安定し、不良やトラブルの再発を防止できます。
一方で、清掃を繰り返しても改善につながらない場合、根本的な仕組みが欠けていると考えるべきです。
「清潔」を意識することで、5Sが“イベント活動”ではなく“日常の仕組み”へと変わります。
つまり、清潔は清掃を「定着」させるための橋渡しの役割を果たします。
清掃から清潔へ進化させる3ステップ
清掃から清潔へ移行するには、次の3つのステップを踏むことが効果的です。
- 原因の排除:汚れ・ゴミ・油漏れなど、再発の根を絶つ。
- ルール化:清掃頻度・道具の置き場所・実施手順を明確にする。
- 見える化:清潔状態を写真や点検表で共有し、誰でも判断できるようにする。
この3ステップを徹底することで、清掃の効果を一時的な“行動”から、
継続的な“仕組み”へと進化させることができます。
これこそが、5Sの清潔の本質です。
清潔を維持するための仕組みづくり
清掃によって一時的にきれいな状態を作っても、それを保てなければ意味がありません。
5Sの「清潔」とは、清掃で整えた状態を誰がやっても同じレベルで維持できるようにすることです。
そのためには、標準化・点検ルール化・見える化という3つの仕組みを整える必要があります。
標準化:誰がやっても同じ状態を保つ
清潔を維持する第一歩は、作業手順や管理方法を標準化することです。
清掃や片付けの仕方が人によって違うと、すぐにムラが生まれ、元に戻ってしまいます。
「どこまでやればOKなのか」「どの状態を良しとするのか」を明確にし、
基準を共有することで、誰が作業しても同じ結果になるようにします。
例えば、清掃手順書や点検基準表を作成し、
「毎日・週次・月次」の清掃区分を決めておくと、作業がブレにくくなります。
また、設備の清掃に使う道具を専用色で分けるなど、標準化を見える形に落とす工夫も有効です。
点検ルール化:チェック頻度と責任区分の明確化
清潔を維持するためには、「誰が・いつ・どのように点検するか」をルール化する必要があります。
点検頻度を決めずに任せきりにすると、最初のうちはきれいでも、徐々にレベルが下がっていきます。
理想的には、
- 日常点検(現場担当者が実施)
- 週次点検(リーダーが確認)
- 月次監査(上位者がチェック)
という三層構造で進めると安定します。
このように責任区分と頻度を明確にすることで、
「誰かが見てくれている」「次の確認がある」という意識が定着し、清潔状態が長続きします。
見える化:基準を共有して品質を一定に保つ
清潔の見える化とは、「きれいな状態を誰でも判断できるようにすること」です。
例えば、設備や作業台の写真を「理想状態」として掲示し、
点検時に“今との違い”を確認できるようにすると、清潔レベルを維持しやすくなります。
また、点検結果をチェックリストで管理したり、スコア表示で共有するのも効果的です。
数字や色で表すことで、清潔状態を感覚ではなく客観的に判断できる仕組みになります。
見える化は、単に「見せる」ことではなく、「気づきを促す仕掛け」です。
これができると、現場全員が“自分ごと”として清潔維持に取り組めるようになります。
ChatGPT:
非常に良い指摘です。
第2ブロックは「仕組みづくり=ルールや基準を整える話(静的な管理)」でしたが、
第3ブロックはその仕組みを“続ける・回し続けるための工夫(動的な運用)”がテーマになります。
つまり──
- 第2章:「どう整えるか(仕組み構築)」
- 第3章:「どう続けるか(運用・促進)」
という明確な対比を意識して構成しました。
以下がその第3ブロックです。
清潔を続けるための工夫と仕掛け
清潔を維持する仕組みを整えても、時間の経過とともに形骸化してしまう現場は少なくありません。
「最初はきれいだったのに、数か月後には元通り」というのは、仕組みがあっても運用が続かない典型例です。
ここでは、清潔活動を“続けられる仕掛け”として機能させるための具体策を紹介します。
異常が起きたときにすぐ戻せる「復元力」づくり
清潔を維持する上で重要なのは、崩れた状態をすぐ戻せる復元力です。
たとえば、製造ラインのトラブル対応や段取り替えの際、一時的に工具や部品が乱れることがあります。
問題は「乱れたこと」ではなく、「元に戻せないこと」です。
復元力を高めるためには、
- 定位置表示(テープ・写真・ラベル)で元の状態を明確にする
- 清潔基準を「どこまで戻せば良いか」で定義する
- 作業終了後に“復元チェック”をルーチン化する
このような仕組みを通じて、清潔の“戻す力”が自然と鍛えられます。
完璧を目指すより、戻せる現場を作ることが継続のカギです。
見た目の変化を維持する「基準写真」の活用
人は、視覚的な変化がなくなると清潔状態を見逃しやすくなります。
そのため、定期的に基準写真を更新することが有効です。
たとえば、改善前・改善後の写真を掲示したままにすると、「昔は汚かった」「今はきれい」という達成感だけが残り、
次の改善につながりません。
数か月ごとに撮り直し、「今の状態が清潔基準として維持されているか」を確認することで、
清潔活動が停滞せず、現場のモチベーションを保てます。
また、写真を更新するプロセス自体が、現場を見直す機会となり、改善意識を刺激します。
続けやすい環境を作る「道具と時間」の整備
清潔活動を継続させるには、「やりにくい」「時間がない」といった障壁を取り除くことが不可欠です。
多くの現場では、清掃・整頓道具の置き場や手順が不便なことが、継続を妨げる原因になっています。
そのために、
- 清掃・点検道具は現場から近い場所に置く
- 清潔活動専用の時間をスケジュールに組み込む(例:朝の10分間)
- 道具の使用後点検を習慣化し、「終わったら戻す」を定着させる
このように、**清潔を“努力”ではなく“環境で支える”**ことで、継続率が大幅に高まります。
清潔活動を文化として定着させる
清潔は、仕組みやルールを整えるだけでは長続きしません。
最終的に「やらされる活動」から「自分たちで守る文化」に変えることが必要です。
この章では、清潔を“文化”として根付かせるための人づくりと仕組みの両面から考えます。
リーダーの行動が現場の基準になる
清潔の定着には、リーダーの姿勢が大きな影響を与えます。
「リーダーが清掃をしない」「点検を形だけで済ませる」といった現場では、清潔活動もすぐに形骸化します。
逆に、リーダー自身が道具を手に取り、率先して整理や清掃を行う現場では、メンバーの意識も自然と高まります。
重要なのは、「言うより先に動く」ことです。
現場では、上司の行動がそのまま職場の基準になるため、
小さな行動の積み重ねが「当たり前の文化」をつくります。
また、リーダーが“できている人を褒める”習慣を持つと、清潔活動が前向きに続きます。
点検の目的を「注意すること」ではなく、「良い状態を共有すること」に変えることで、
チーム全体にプラスの雰囲気が生まれます。
定着を支える「躾」との連携
5Sの最終段階である「躾(しつけ)」は、清潔を文化として定着させるうえで不可欠な要素です。
清潔で整った環境を維持し続けるには、「守る力」と「続ける習慣」を育てることが必要です。
躾の段階では、
- ルールを守る姿勢を評価する
- 清潔の意味を共有し、意義を理解させる
- 自ら考え行動できる環境をつくる
といった取り組みが効果的です。
これにより、清潔は「指示された作業」から「自ら守る文化」へと進化します。
➡️ 5S活動のコツ!躾を成長に変える仕組み(アイデア)作り
清潔を“習慣化”から“誇り”へ
清潔が文化として根付いた職場では、
「汚れていない」状態が誇りとなり、作業者のモラルや士気の向上につながります。
清潔が当たり前になった現場は、自然と改善提案も多くなり、
5Sが単なる活動ではなく、**“現場の力そのもの”**へと成長します。
清潔を文化として定着させるには、
ルールで縛るよりも、“守りたくなる環境と雰囲気”をつくることが大切です。
まとめ:清掃を“終わり”にせず、清潔で“維持する力”を育てよう
5S活動の中で「清掃」は比較的取り組みやすい要素ですが、
本当の効果を発揮するのは“清潔”の段階に入ってからです。
清掃が一時的な「きれいにする行動」だとすれば、清潔は「その状態を保つ仕組み」です。
清潔を意識することで、現場は“繰り返す改善”から“維持できる仕組み”へと進化します。
清潔を定着させるポイントは、次の3つです。
- 仕組みを整える(標準化・ルール化・見える化)
- 工夫で続ける(復元力・基準写真・環境整備)
- 人で守る(リーダー行動・躾による文化化)
このサイクルが回り出すと、清潔は単なる活動ではなく「現場を安定させる基盤」となります。
品質・安全・コストの全てに良い影響を与え、職場全体の意識向上にもつながります。
「清掃で終わらせず、清潔で保つ」――
その意識が、5Sを“見た目の改善”から“本質的な現場力向上”へ変える第一歩です。
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