課題形成によって、
「何に取り組むのか」が明確になっても、
次に多くの現場がつまずくのが、
どこから手を付けるべきか分からないという状態です。

課題が大きすぎる、
要素が多すぎる、
関係者ごとに見ている点が違う。
こうした状態では、改善はなかなか前に進みません。

そこで必要になるのが、
問題を構造化して整理することです。

本記事では、
形成した課題を分解し、
扱える大きさに整理するための
「問題の構造化」の考え方を、
製造現場の実務に即して解説します。

目次
  1. 問題を構造化するとはどういうことか
    1. 一覧化と構造化は別物である
    2. なぜ分解しないと改善が止まるのか
    3. 構造化は「深掘り」ではない
    4. 構造化のゴール
  2. なぜ問題は「大きすぎる」状態になりやすいのか
    1. 問題を「方向性」で捉えてしまっている
    2. 異なる性質の問題が一つにまとめられている
    3. 問題同士の関係を意識しすぎてしまう
    4. 問題を分解する経験が不足している
    5. 大きすぎる問題は構造化できない
  3. 構造化で最初にやるべきこと
    1. いきなり原因分析をしない
    2. 問題を横に並べる
    3. 問題の境界を意識する
    4. 「正解の分け方」を探さない
    5. 構造化の時点で決めないこと
  4. 問題を分解する代表的な切り口
    1. 工程で分ける
    2. 作業内容で分ける
    3. 人・機械 設備・材料・ルールで分ける
    4. 時系列で分ける
    5. 切り口は一つに限定しなくてよい
  5. 構造化すると「論点」が見える
    1. 全部を一度に考えなくてよくなる
    2. 議論すべき問題と、後回しにできる問題が分かれる
    3. 関係者ごとの役割が見えやすくなる
    4. 次に深掘りすべき問題が選べるようになる
    5. 議論が「感覚」から「整理」に変わる
  6. 構造化と原因分析の違い
    1. 構造化は「全体を整理する工程」
    2. 原因分析は「一つを深く掘る工程」
    3. この順番が重要である理由
  7. まとめ
  8. 問題構造化を改善活動に活かす実務ポイント
    1. 構造化は原因分析の前に行う
    2. 優先順位は影響度と実行しやすさで決める
    3. 改善が止まるときは問題の分け方を見直す
  9. 関連する記事
  10. よくある質問
    1. 問題を構造化するとは何ですか?
    2. 問題構造化は何から始めればよいですか?
    3. 問題を構造化しても改善が進まない原因は何ですか?
    4. 原因分析とはどう違いますか?

問題を構造化するとはどういうことか

問題を構造化するとは、
課題を細かく分解し、それぞれの関係性を整理することです。

ここで重要なのは、
問題を「たくさん挙げること」でも、
「原因を深掘りすること」でもありません。

構造化の目的は、
問題の全体像を把握し、どこに手を付けるべきかを見える状態にすることです。


一覧化と構造化は別物である

改善の現場では、
問題を付箋やリストで洗い出すことがあります。
これは有効な作業ですが、
それだけでは構造化にはなっていません。

  • 問題が並んでいるだけ
  • それぞれの関係が分からない
  • 重要度の差が見えない

この状態では、
「結局、どれからやるのか」という議論に進めません。

構造化とは、
洗い出した問題を意味のあるまとまりに分け、位置づけを明確にすることです。


なぜ分解しないと改善が止まるのか

課題が「大きすぎる」状態のままでは、
現場は動けません。

例えば、

  • 属人化を解消する
  • 生産性を向上させる

といった課題は、
方向性としては正しくても、
そのままでは具体的な行動に落とせません。

構造化によって、

  • どの部分の属人化なのか
  • どの工程・どの作業に影響しているのか

を分けて考えることで、
初めて改善の入口が見えてきます。


構造化は「深掘り」ではない

構造化と原因分析は、
よく混同されますが、役割が異なります。

  • 構造化:問題を分けて整理する工程
  • 原因分析:一つの要素を掘り下げる工程

構造化の段階で、
「なぜなぜ」を始めてしまうと、
全体を見ないまま一部に入り込んでしまいます。

まずは、
問題を横に並べ、関係を整理する
深掘りは、その後です。

議論がかみ合わないようなケースでは、構造でいう深さが違っている事が多くあります。
議論を嚙合わせるためにも、構造化が重要です。


構造化のゴール

問題を構造化した結果、
次の状態になっていれば良いと考えます。

  • 問題がいくつかの塊に分かれている
  • それぞれの範囲が見えている
  • 「ここから手を付ける」という候補が見えている

構造化は、
答えを出す工程ではありません。
考える準備を整える工程です。

なぜ問題は「大きすぎる」状態になりやすいのか

問題を構造化しようとするとき、
多くの現場で最初につまずくのが、
問題そのものが大きすぎる状態になっているという点です。

ここでいう「大きすぎる」とは、
重要であるがゆえに、
そのままでは分解や整理ができない状態を指します。


問題を「方向性」で捉えてしまっている

問題が大きくなりやすい代表例が、
問題を方向性の言葉で捉えてしまっているケースです。

  • 属人化している
  • 生産性が低い
  • 品質が安定していない

これらは、
姿とのギャップを大まかに表現した言葉ではありますが、
構造化の出発点としては抽象度が高すぎます。

方向性レベルの問題は、
そのままでは分解の切り口が見えず、
構造化が止まってしまいます。


異なる性質の問題が一つにまとめられている

問題が大きくなるもう一つの理由は、
性質の異なる問題が一つにまとめられていることです。

例えば「属人化している」という問題の中には、

  • 作業手順が人によって違う
  • 判断基準が言語化されていない
  • 教育のやり方が統一されていない

といった、
別々に扱うべき問題が含まれています。

これらを分けずに一つの問題として扱うと、
構造化しようとしても、
どこで区切ればよいのかが分からなくなります。


問題同士の関係を意識しすぎてしまう

現場の問題は、
実際には相互に影響し合っています。

そのため、

  • ここだけ切り出しても意味がない
  • 全体で考えないと解決しない

と感じてしまい、
問題を分けること自体をためらってしまうケースがあります。

しかし、
影響し合っていることと、
構造として分けて整理できないことは別です。

構造化は、
問題を切り離すためではなく、
関係を整理するために行います。


問題を分解する経験が不足している

多くの現場では、

  • 問題を挙げる
  • 対策を考える

という流れはあっても、
問題を分解して整理する工程
意識的に行う機会は多くありません。

その結果、
一つの大きな問題を前にして、
何から考えればよいのか分からない状態が生まれます。

これは能力の問題ではなく、
構造化という工程が共有されていないことが原因です。


大きすぎる問題は構造化できない

問題が大きすぎる状態では、

  • 切り口が見えない
  • 論点が定まらない
  • 次の分析に進めない

という状況になります。

だからこそ、
問題をそのまま扱おうとするのではなく、
分解し、整理できる大きさにすること
構造化の第一歩になります。

構造化で最初にやるべきこと

問題を構造化しようとすると、
つい「原因は何か」「どう対策するか」を考えたくなります。
しかし、構造化の最初の一手は、そこではありません。

最初にやるべきことは、
問題を“深掘りしない”と決めることです。


いきなり原因分析をしない

構造化と原因分析は、
似ているようで役割がまったく異なります。

  • 構造化:問題を分けて整理する工程
  • 原因分析:一つの問題を掘り下げる工程

構造化の段階で原因を考え始めると、
一部の問題だけを深く掘ってしまい、
全体像を見失いやすくなります。

まずは、
「なぜ起きているか」ではなく「どんな問題があるか」
に意識を向けます。


問題を横に並べる

構造化の第一歩は、
問題を上下関係や因果関係で捉えるのではなく、
一度、横に並べることです。

  • どの工程に関係する問題か
  • どの作業に現れている問題か
  • どの立場に影響している問題か

こうして並べることで、
問題の広がりや偏りが見えてきます。

この段階では、
重要度や優先順位を決める必要はありません。


問題の境界を意識する

問題を並べる際に意識したいのが、
**それぞれの問題の「範囲」**です。

  • どこからどこまでが同じ問題なのか
  • 別の問題として切り出すべき部分はどこか

境界を意識することで、
一つの問題に含まれていた要素が分かれ、
扱える大きさになっていきます。


「正解の分け方」を探さない

問題の構造化には、
唯一の正解があるわけではありません。

  • 工程で分けてもよい
  • 作業内容で分けてもよい
  • 人・設備・ルールで分けてもよい

重要なのは、
分けた結果として、考えやすくなっているかどうかです。

正しい構造を作ろうとするよりも、
議論しやすい構造を作ることを優先します。


構造化の時点で決めないこと

構造化の段階では、
次のことを無理に決める必要はありません。

  • どれが一番悪いか
  • どれを最優先にするか
  • どうやって直すか

これらは、
構造化の「次」に行う作業です。

まずは、
問題を整理し、
考える土台を整えることに集中します。

問題を分解する代表的な切り口

問題を構造化する際に重要なのは、
あらかじめ「分ける視点」を持つことです。

切り口がないまま問題を眺めていると、
分解は感覚的になり、
構造として整理できなくなります。

ここでは、
製造現場で使いやすい
問題を分解する代表的な切り口を整理します。


工程で分ける

最も基本的で使いやすい切り口が、
工程ごとに問題を分ける方法です。

  • 加工工程で起きている問題
  • 組立工程で起きている問題
  • 検査工程で起きている問題
  • 出荷工程で起きている問題

同じ「不良が多い」という問題でも、
どの工程で発生しているかによって、
意味合いは大きく異なります。

工程で分けることで、
問題の発生場所と関係者が整理されます。

私が支援を行う場合には、まずは工程の流れを把握し、問題の発生点を明確にすることから始めています。


作業内容で分ける

次に有効なのが、
作業の種類に着目して問題を分ける方法です。

  • 段取り作業に関わる問題
  • 定常作業に関わる問題
  • 確認・検査作業に関わる問題
  • 例外対応時に起きている問題

同じ工程内であっても、作業内容が違えば、問題の性質も変わります。

この切り口を使うと、
「どの作業に問題が集中しているか」が見えてきます。

把握した工程の流れから、作業の流れへと分解することで、より構造化が進んでいきます。


人・機械 設備・材料・ルールで分ける

問題が複雑な場合は、
視点を切り替えて分けることも有効です。

  • 人に起因する問題
  • 機械・設備に起因する問題
  • 材料に起因する問題
  • ルール・仕組みに起因する問題

この切り口は、
問題が属人的なものなのか、
構造的なものなのかを整理するのに役立ちます。

これは生産要素の4Mと呼ばれるもので、現場の人もイメージしやすい構造化の方法です。


時系列で分ける

問題は、
発生しているタイミングで分けることもできます。

  • 作業開始時に起きている問題
  • 段取り替え時に起きている問題
  • 繁忙期に顕在化する問題
  • イレギュラー対応時に起きている問題

時間軸で分けることで、特定の条件下で現れる問題が浮かび上がります。


切り口は一つに限定しなくてよい

問題の構造化では、
切り口を一つに決める必要はありません。

  • まず工程で分ける
  • 次に作業内容で分ける
  • さらに人・機械 設備・材料・ルールで見る

というように、
複数の切り口を重ねて整理しても構いません

重要なのは、
問題が整理され、
次に「どれを深く見るか」を議論できる状態に
なっているかどうかです。

構造化すると「論点」が見える

問題を構造化すると、
単に問題が整理されるだけでなく、
「どこを議論すべきか」 が明確になります。

これは、
改善を前に進めるうえで非常に大きな変化です。


全部を一度に考えなくてよくなる

問題を構造化する前は、
あらゆる問題が一つの塊として見えがちです。

  • どれも重要に見える
  • どこから手を付けても中途半端になる
  • 結局、何も決まらない

構造化によって問題が分かれると、
「今はこの問題を考える」と
論点を限定できるようになります。

これにより、
議論が前に進みやすくなります。


議論すべき問題と、後回しにできる問題が分かれる

問題を分解して並べると、
影響度や緊急度の違いが自然と見えてきます。

  • すぐに手を付けるべき問題
  • 時間をかけて考える問題
  • 他の問題を整理してから扱う問題

この区別がつくことで、
「全部やらなければならない」という
無意識のプレッシャーが減ります。


関係者ごとの役割が見えやすくなる

構造化された問題には、
関係する工程や立場が紐づいています。

  • 現場作業者が関わる問題
  • 設備担当が関わる問題
  • 管理側が関わる問題

そのため、
誰が議論に参加すべきか、
誰に確認が必要かが明確になります。

結果として、
「関係者が揃わずに話が進まない」
といった状況を減らすことができます。


次に深掘りすべき問題が選べるようになる

構造化の目的は、
問題をすべて解決することではありません。

分けた結果として、

  • どの問題を次に深掘りするか
  • どれを原因分析の対象にするか

を選べる状態になることが重要です。

ここで初めて、
原因分析という次の工程に進む準備が整います。


議論が「感覚」から「整理」に変わる

問題が構造化されていない状態では、
議論はどうしても感覚的になります。

  • 何となく大変そう
  • 重要そうな気がする

構造化によって問題が整理されると、
議論は「印象」ではなく
整理された情報をもとに進められるようになります。

構造化と原因分析の違い

問題を整理する場面で、
構造化と原因分析は混同されやすい工程です。
しかし、この二つは目的も役割も異なります


構造化は「全体を整理する工程」

構造化の役割は、
問題を分け、関係性を整理し、全体像を把握することです。

  • どのような問題があるのか
  • どの問題が、どこに関係しているのか
  • どの問題を次に扱うべきか

を見える状態にすることが目的です。

構造化の段階では、
「なぜ起きているのか」までは踏み込みません。


原因分析は「一つを深く掘る工程」

一方、原因分析は、
構造化によって切り出された一つの問題を対象に行います。

  • なぜその問題が起きているのか
  • どこに根本的な要因があるのか

を掘り下げ、
再発防止や改善につなげるための工程です。

構造化を飛ばして原因分析を始めると、
全体像を見ないまま一部だけを深掘りしてしまい、
的外れな分析になりやすくなります。


この順番が重要である理由

  • 構造化 → 問題を整理し、論点を選ぶ
  • 原因分析 → 選んだ問題を深掘りする

この順番を守ることで、
分析は意味を持ち、
改善は筋道を持って進みます。

構造化は、
原因分析の前に必ず通るべき工程です。


まとめ

問題を構造化するとは、
問題を分解し、関係性を整理し、
扱える形にすることです。

  • 問題が大きすぎると、改善は動かない
  • 構造化によって、論点が見える
  • どの問題を次に深掘りするかが選べる

構造化は、
答えを出すための工程ではありません。
考える準備を整えるための工程です。

この準備が整って初めて、
次の「原因分析」が意味を持ちます。

次の記事では、
構造化によって選ばれた問題を対象に、原因分析の考え方を整理します。

問題構造化を改善活動に活かす実務ポイント

構造化は原因分析の前に行う

問題が大きいまま原因分析を始めると、論点が広がりすぎて対策が決まりません。まず工程、作業、設備、人、材料、情報の流れなどで問題を分け、どこを深掘りするかを決めます。構造化は、なぜなぜ分析や特性要因図に入る前の整理工程です。

優先順位は影響度と実行しやすさで決める

構造化した問題は、すべて同時に解決する必要はありません。品質影響、納期影響、工数、再発頻度、現場負担を見ながら、優先順位を決めます。小さくても効果が見えるテーマから始めると、現場の納得感を得やすくなります。

改善が止まるときは問題の分け方を見直す

対策会議をしても結論が出ない、毎回違う問題に話が移る、原因分析が進まない場合は、問題の構造化が不十分な可能性があります。G.F.Consultingでは、現場の事実をもとに問題を分解し、取り組む順番を整理する支援を行っています。問題整理・改善テーマ設定の相談はこちら

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よくある質問

問題を構造化するとは何ですか?

問題を構造化するとは、大きく見える問題を要素に分け、関係性や優先順位を整理することです。製造現場では、品質、設備、人、材料、方法、時間帯などが絡み合うため、問題を一つの言葉で捉えると対策がぼやけます。分解することで、どこから手を付けるべきかが見えます。

問題構造化は何から始めればよいですか?

まず、問題を現象、場所、対象、頻度、影響に分けて書き出します。次に、工程、作業、4M、人や設備などの切り口で整理します。いきなり原因を決めつけず、事実を並べて関係性を見ることが大切です。構造が見えると、原因分析や課題形成に進みやすくなります。

問題を構造化しても改善が進まない原因は何ですか?

原因は、分解しただけで優先順位や行動に落とせていないことです。構造化は整理の手段であり、改善テーマを決める前段階です。影響度、緊急度、実行しやすさを見て、最初に取り組む範囲を絞る必要があります。課題形成とつなげることで、行動に移しやすくなります。

原因分析とはどう違いますか?

問題構造化は、問題を分解して全体像を見えるようにする作業です。原因分析は、その中から特定の問題について、なぜ起きたのかを深掘りする作業です。構造化せずに原因分析へ入ると、論点がずれやすくなります。先に問題を整理してから原因分析へ進むのが効果的です。

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この記事を書いた人

GFC 上村正和
GFC 上村正和 中小企業診断士・日本生産性本部認定経営コンサルタント・1級販売士

職人一筋、木工加工から精密金属加工までを経験。精密金属加工会社では工場長を務める。現在は、中小製造業を対象に現場が活きる経営のサポートを行っている。コンサルティングを中心にのべ100社の支援実績。「日本の製造業をもう一度世界一にしたい!」という想いで支援を続けている。