親和図は、集めた意見や気づきを内容の近さでまとめ、全体にどのような問題や関心があるのかを見える形にする図です。一つひとつの言葉をカードに書き、似た内容を寄せて見出しを付けることで、散らばった声のつながりを整理します。現場ヒアリングや改善会議で、多くの声は集まったものの、何から確かめればよいか決めにくいときに活用できます。
たとえば、組立作業で「使う治具が分からない」「図面が使える版か分からない」「部品を判別できない」という声が出たとします。これらをカードにして並べると、「着手に必要な情報を作業台で確かめられない」という共通の困りごととして捉えられます。工場長と作業者がそのまとまりを見ながら、指示書や表示のどこを確認するか話し合う。親和図は、このように現場の声を次の確認につなげるために使えます。
この記事では、架空の組立工程を例に、思いついた困りごとや気づきをたくさん出し、カード同士の結びつきからまとまりを作る手順を説明します。最初から、確認済みの事実だけに発言を絞る必要はありません。観察したことを記した事実カードと、意見・推測・要望のカードを区別して残し、整理した後で必要なことを現場で確かめます。
親和図で整理すること、整理だけでは決まらないこと
親和図が扱うのは、まだ整理しきれていない言葉の情報です。困りごとの共通点を見つけると、次に調べる対象を絞りやすくなります。この節では、親和図を使う場面と、別の確認が必要な判断を分けます。
親和図は、まず多くの言葉を出し、後から結びつきを考える
親和図では、まずテーマについて思いつくことをできるだけ多く出します。困った経験だけでなく、「ここが気になる」「こうなれば助かる」といった気づきや要望も、一枚に一つずつ書きます。出している途中で正しさや重要さを判定せず、カードがそろってから「この二つはつながりがありそうだ」と考えながら寄せていきます。
たとえば、「図面を探すのに手間がかかる」「どれが最新の図面か迷う」「使う図面を作業台にまとめてほしい」という声を出してもらいます。カードを並べて読むと、経験と要望の両方から「必要な図面をすぐに使えるようにしたい」という結びつきが見えてきます。最初から分類先を決めず、たくさん出た言葉を見比べてまとまりを考えることがポイントです。
思いつきも整理の材料になりますが、書かれたことがすべて確認済みの事実になるわけではありません。事実カードには観察・聞き取りの別を、意見や要望にはその種類を添えておきます。発言を広く集める段階と、原因や対策を決めるために確かめる段階を分けて進めましょう。
まとまりは原因や優先順位の証明にはならない
カードが近くに並んでも、それだけで原因と結果が結び付いたことにはなりません。枚数が多いまとまりも、発言者の多さや聞き方の影響を受けます。原因の確定、発生頻度の比較、対策の採否は、元の記録や現場を確認してから決めます。
手法を選ぶ際は、いま必要な成果物を次のように分けると迷いにくくなります。
| いま整理したいこと | 次に作るもの |
|---|---|
| 困りごとの言葉が散らばっている | 親和図でまとまりと追加確認事項を作る |
| 問題が決まり、原因候補を広く挙げたい | 特性要因図で原因候補を整理する |
| 二つの要素群の関係を見たい | マトリックス図で交点の関係を整理する |
| 実際の原因や影響の大きさを確かめたい | 観察・記録の照合や測定を行う |
問題全体の分け方に戻る場合は、現場改善における問題の構造化も参考にしてください。本記事では、その前段となる言葉の整理に集中します。
現場の困りごとや思いつきを、一枚一内容でたくさん出す
まずは対象の工程と場面を決め、参加者からできるだけ多くの言葉を集めます。きれいな文章や詳しい裏付けがなくても、思いついた時点でカードに書いて構いません。ここでは、声を出しやすくする進め方と、後で読み比べられるカードの書き方を示します。
手順1:工程と場面を決め、思いつくことを広く出してもらう
最初のテーマは、現場で指差して確かめられる範囲に絞ります。「工場の問題」では広すぎるため、「組立を始める前に困ること」のように、工程と場面を組み合わせます。工場長は進行役と作業者が確認する時間を確保し、発言の良し悪しを評価する会議にしないと伝えます。
以下は、手順を説明するために組み立てた架空の組立工程の例です。実在企業での支援実績や改善結果ではありません。
製品の切替後、組立班長が朝礼で着手の遅れを取り上げたところ、作業者から「確認ばかりで進まない」という声が出たとします。ここで班長が「教育不足だ」と結論を出したり、発言のたびに証拠を求めたりすると、ほかの気づきを出しにくくなります。進行役は「組立を始める前に困ることや、こうなれば助かると思うことを、思いつくままに書いてください」と促します。
声を集めている間は、一枚ごとに詳しい聞き取りを挟まず、ほかにも思いつくことがないか促します。次の項目は、分かる範囲で補助メモに残し、不明な点は整理後に確かめます。書けない項目があることを理由に、カードを取り除く必要はありません。
- 対象工程と、いつ・どの作業段階の話か
- 起きたことと、そのとき行った確認
- 自分で観察したこと、聞いたこと、意見・推測・要望のどれか
- 照合できる指示書や記録があるか、まだ不明か
手順2:一枚に一つ書き、事実と意見の区別を添える
「連絡が悪い」のような短い言葉も、まずはそのまま一枚に書きます。一枚に二つの内容があれば分け、観察したことか、意見・推測・要望かが分かる印を添えます。カードが集まった後、意味が伝わりにくいものは発言者に聞き、聞いていない日時・回数・原因を進行役が補わないようにします。
次の表は、集めた声のうち、出来事の詳細を聞けた場合の架空の記入例です。右欄のように詳しく書くことは、最初に声を出すための条件ではありません。左欄の言葉だけから右欄の事実を推測せず、元の発言も残しておきます。
| 最初の発言 | 聞き直して確認できたカードの例 |
|---|---|
| 連絡が悪い | 切替品の指示書を見たが、使う治具が分からず班長に聞いた |
| 図面も部品も分からない | 作業台の図面が切替品に使える版か分からず、着手を止めた |
| 図面も部品も分からない | 部品箱の表示では使用する部品を判別できず、隣の作業者に聞いた |
| ベテランがいないと進まない | 組立方向を確認できる人が別工程にいて、返事を待った |
二つの出来事を含む発言は分けます。元の発言とカード番号を対応させておけば、切り分ける途中で意味を変えていないか確認できます。
「人手不足だと思う」「表示を変えてほしい」も、推測・要望の印を付けたカードとして並べます。事実カードとの結びつきを考える材料にできますが、原因が確定した証拠としては扱いません。内容を広く出すことと、確かさを区別しておくことは両立できます。
カードを寄せ、まとまりを表す表札を作る
全員がカードを読めるように並べてから、内容の近さで寄せます。表札は、寄せたカードに共通する意味を示す短い文です。この節では、分類を急いで現場の違いを消さない進め方を説明します。
手順3:集まったカードを読み、結びつきがありそうなものを寄せる
進行役は分類名を指示せず、参加者がカードを動かせるようにします。最初は各自が静かに読み、似ていると感じるカードを近くへ置きます。その後、置き場所が分かれたカードを取り上げ、どの内容を見て寄せたのかを話し合います。
先ほどの架空の例なら、「使う治具が分からない」「図面が使える版か分からない」「部品を判別できない」を近くへ置き、着手に必要な情報をその場で確かめられない、という共通点を考えられます。そこへ「表示を変えてほしい」という要望を並べれば、どの表示で困っているのかを話すきっかけになります。「組立方向を確認できる人の返事を待った」も含め、ほかのカードと結びつくかを見比べ、合わなければ離して残します。
この並べ方が唯一の正解ではありません。参加者が別の意味を読み取ったら、元のカードを見ながら並べ直します。役職者の一言で配置を固定しないことが、現場の見方を残すうえで重要です。
手順4:表札を付け、入らないカードは独立して残す
表札は「情報」「人」のような広い名詞だけでなく、カードに共通する状況を表す文にします。表札を読んだ人が、どの場面を確かめればよいか思い浮かべられる形が目安です。新しい意味を足してしまった場合は、カードに戻って書き直します。
| 表札の案 | 判断 |
|---|---|
| 情報不足 | 広すぎて、何を確かめるかが伝わりにくい |
| 着手に必要な情報を作業台で確かめられない | カードが示す場面に戻りやすい |
| 班長の教育不足が遅れの原因 | カードにない原因と責任を付け足している |
一枚だけ残るカードを、見た目のためにどこかへ入れる必要はありません。「確認相手の返事を待つ」というカードが他と合わなければ、そのまま残します。安全や品質に関わる内容なら、枚数の少なさを理由に後回しにせず、職場の既存手順に沿って確認します。
二つのまとまりに関係する場合は、関連をメモするか、同じ元カード番号を付けた写しを置きます。写しは新しい発生事実ではないので、枚数を発生件数として数えないようにします。
最後に、元のカードを一枚ずつ読み、表札の下で意味が変わっていないか確かめます。大きなまとまりへまとめ直すのは、それで次の確認対象が見えやすくなる場合だけで十分です。
親和図を次の現場確認へ渡す
図を完成させただけでは、作業の困りごとは解消しません。まとまりごとに、分かったことと、まだ確かめていないことを分けて残します。工場長と進行役は、担当・確認する場面・見直す日を決め、次の行動までつなげます。
手順5:表札ごとに、元の事実と追加確認事項を残す
追加確認事項は、現場で答えを得られる問いにします。「情報共有を改善する」では広いため、どこに何があり、誰がどう使うかまで絞ります。進行役は作業者と一緒に対象を確認し、推測が外れた場合も元のカードを消さずに記録を更新します。
次の表は、架空の組立工程を次の確認へ渡す記入例です。確認日は実際の生産予定に合わせて設定し、ここに書いた結果を確認済みとは扱いません。
| 表札・カード | 追加で確かめること | 担当と確認の場面 | 完了の目安 |
|---|---|---|---|
| 着手に必要な情報を作業台で確かめられない | 治具の指定、図面の版、部品表示を、作業者がどこで確認しているか | 班長と作業者が次回の切替時に確認 | 確認先と、分からなかった箇所を記録できた |
| 確認相手の返事を待つ | 確認相手が不在のときの連絡先と、着手判断の手順があるか | 工場長が班長と既存手順を照合 | 手順の有無と未決事項を区別できた |
図面の版管理や部品表示に問題があるかどうかは、この確認をしてから判断します。まとまりの名前だけを見て、教育や人員追加を決めないようにしましょう。
原因候補を整理する段階に進んだら、特性要因図を使った原因候補の整理へつなげられます。親和図の表札を、そのまま証明済みの原因として移すことは避けます。
手順6:工場長が確認の時間を確保し、次の会議で戻す
工場長の役割は、現場が事実を確かめる時間と、必要な部署への確認機会を用意することです。作業者の「探す」「聞く」「待つ」という場面を、着手の遅れや誤作業の懸念と結び付けて検討します。損失額や効果を示す場合は、別途確認した時間・件数・条件を使い、カード枚数から算出しません。
次の改善会議では、表札だけでなく、元カードと追加確認の結果を一緒に見ます。事実が異なれば表札や配置を直し、課題が確かめられたら対策の検討へ進みます。確認できなかったものは、担当や機会を調整して未確認のまま残します。
会議で決めた確認が続かない場合は、改善会議の進め方も参照してください。図の見栄えより、次の会議で確認結果に戻れることを重視しましょう。
よくある質問
初めて親和図を作ると、分類の正解やカードの枚数が気になりがちです。ここでは、現場で進行役が迷いやすい点を整理します。迷ったときは、図を整えることより、元の発言と確かめたい場面に戻って判断してください。
親和図と特性要因図はどう使い分けますか?
困りごとの言葉が散らばり、何を問題にするかが定まらない段階では親和図を使います。問題が決まり、原因候補を整理したい段階では特性要因図が候補になります。どちらも、図を作っただけで実際の原因が証明されるわけではありません。
カードが少なくても始められますか?
少なくても、聞き取り内容を確かめる練習として始められます。ただし、少ない発言だけで工程全体の問題を網羅したとは判断できません。参加していない役割や、異なる切替条件の場面も必要に応じて確認します。
意見が割れてカードを寄せられないときはどうしますか?
多数決で押し込まず、どの文言を見て置き場所を選んだのかを聞きます。一枚に複数の出来事があれば分け、状況が足りなければ発言者へ確認します。すぐに決められないカードは独立して残し、追加確認事項を付けます。
カードが多いまとまりから対策を始めてよいですか?
カードの枚数だけで対策の順番を決めるのは避けます。同じ出来事の重複や写しを確認し、実際の発生頻度、影響、安全・品質上の懸念を別に確かめます。そのうえで、現場と管理者が確認結果を共有して優先順位を決めます。
最初の一歩は、一つのテーマで思いつくことを出すこと
親和図の出発点は、思いついた困りごとや気づきを多く出すことです。その後でカードを見比べ、結びつきのあるものを寄せて表札を付けます。事実カードと意見・要望の区別を残し、確かめたいことを次の現場確認へつなげましょう。
まず一工程で、経験・気づき・要望をカードに書く
進行役は、次の朝礼で「組立を始める前に困ること」など、一つのテーマを示します。作業者に「思いつきでもよいので、困ったことや、こうなれば助かることを出してください」と促し、一枚に一つずつ書いてもらいます。工場長はその場で採否を決めず、全員が声を出してからカードの結びつきを考える時間を確保してください。
その後、カードを寄せて表札を付け、追加確認の担当と日を決めます。まとまらないカードも含めて保存すれば、次の聞き取りをどこから始めるかが見えます。
整理した声を、記録と確認の運用につなげる
次の会議では、担当者が元カードと現場確認の結果を持ち寄ります。対策を急ぐ前に、何が確かで何が未確認かをそろえます。この往復を、記録・教育・標準化を検討する入口にしてください。
困りごとを整理しても、確認先や教え方を決める段階で止まる場合は、属人化対策と技術伝承の進め方も参考になります。自社の運用設計を相談したい方は、リンク先の末尾にある無料診断・問い合わせ案内をご確認ください。



