日本の生産性は低いと言われていますが、果たして本当でしょうか?

日本といえば「ものづくり大国」

世界からも認められる工場が多くある中、生産性が低いというのは信じがたい。

町工場の現場出身の中小企業診断士としても受け入れがたいですね。

そして日本生産性本部認定コンサルタントとしては何とか工場の生産性を向上させていきたい所です。

今回は「工場の生産性」を向上させるには何が必要か考察していきます。

そもそも 生産性とは

生産性とは

アウトプット÷インプット

生産性はアウトプット÷インプットです。

 

工場の生産性でいうと以下のような計算式が成り立ちます。

工場の生産性

アウトプット=生産額・付加価値・生産量などの成果

インプット=人件費・材料・設備費などのコスト

生産額・(付加価値・生産量)÷コスト(人件費+材料費+設備費等)

日本の製造業の労働生産性は主要31か国中16位

2018年の日本の製造業の労働生産性水準(就業者一人当たり付加価値)は、98,795ドル(1,094万円/為替レート換算)。

日本の水準は、米国の概ね2/3にあたる。

ドイツ(100,476ドル)や韓国(100,066ドル)をやや下回るものの、英国(97,373ドル)を若干上回る水準となっている。

日本の生産性水準は2年連続で上昇しているが、順位でみるとOECDに加盟し計測に必要なデータを利用できる主要31カ国の中で16位にとどまっている。

出所:日本生産性本部 労働生産性の国際比較より

 

レポートの内容をざっくり読み取ると

1位 アイルランドは法人税を低く設定した事による本社誘致による影響と考えられる。

2位 スイスはロレックスなどのブランド力による高付加価値(高価格)提供が大きい。

3位 デンマークは高級オーディオ、風力発電機などの領域で競争力を発揮。

ものづくりのライバル ドイツは17位と僅差で日本が上回る。

 

以上のような事が書かれていました。

 

ここで考えられる事は、生産性の高い国は「アウトプット=高付加価値」の提供を行っているという事です。

日本の強み「コストカット」よりも、高く売る「高付加価値」の方が生産性に影響を与えているとみる事も出来ます。

 

日本にも「車・家電」という武器がありますが、「高級」ではなく「高品質」がウリの事が多い気がします。

高く売る事よりも、「良いものを安く売る」事が美学がそうさせたのではないでしょうか?

工場の生産性向上のために必要な事

ずばり「高く売る」事となります。

そして今まで通り「コストカット」の努力をすれば、安い投入で高く売るため生産性は大きく向上すると考えます。

コストカット面は日本を参考にしている海外企業も多いです。

つまり

日本の製造業の生産性

インプットの要素「コストカット」は世界的に見て優位性が高い。

アウトプットの要素「高付加価値」は世界的に見て優位性が低い。

以上が、現在の日本の状況であると考えます。

ではどうすれば高く売れるのでしょうか?

この記事を読まれている方の多くは「下請け企業」の経営者であると思いますので、「下請け企業」も考慮して考察してみます。

工場の生産性向上のために必要な3つ方法

  1. 市場開拓
  2. 自社製品開発
  3. 競争力強化

以上のような戦略が考えられます。つまりは、売る力を強化する事ですね。

それぞれの特徴は以下の表の通りです。

市場開拓 自社製品開発 競争力強化
効果の大きさ
戦略の難しさ
効果が出るまでの期間 長い 長い 短い
得られるもの 新分野のノウハウ 開発力・新たな武器 強みの強化・弱みの克服
達成のためのポイント 営業力 マーケティング 自己再評価

市場開拓

私の経験上、もっとも効果が多くなるのはこの市場開拓です。

新たな市場は工場の生産性向上のための付加価値向上の可能性を秘めています。

下請け中心の製造業では、ある特定の市場に特化しているケースが多く見られます。

そのため、新しい業界にチャレンジする事が、知識・ノウハウの不足により、難しい傾向にあります。

実際に私が現場にいた頃も医療分野・真空分野・自動車分野など様々な市場にトライしましたが、

面粗度・幾何公差・穴公差など仕上がりに対する要求が分野によって違ってくるため、加工時間が伸びてしまいました。

指定材料にも違いがありますね。

ノウハウの獲得まで現場は挑戦続きなので、不満も出やすいです。

しかし、これは続けていく事で自社の力になるので、長期的に考える事が出来れば、現場の問題は解決するでしょう。

もっとも大きな問題は

新市場をどうやって開拓するか・そのための「営業力」をどう強化するかに全てがかかっています。

見積精度が悪ければ、仕事が来なくなりますし、相手の要求をしっかりと把握しなければ他の製品等の追加受注にはつながらないでしょう。

「営業力の強化」についてはまた別の記事でお話出来ればと思います。

こういった問題をクリアすれば、新市場では価格相場がこれまでの相場よりも良い仕事にありつける可能性は十分にあります。

分野を超える企業が少ないため、相場は固定的になっており、参入した時に「こんなに高くてもいいのか」と驚いた経験があります。

ただし逆もしかりですね。「こんなに安くては参入の意味がない」という事もありますので、いいことばかりではありませんね。

自社製品開発

自社製品の大きなメリットは価格決定が出来る事です。

価格決定する事で工場の生産性向上のための付加価値向上につながります。

中小製造業の多くは下請け企業です。ですので、価格の決定権が顧客にあるのが基本となります。

もちろん見積を提出しますが、高ければ値下げ要求・安くても値下げ要求といった事も多いかと思います。

また、相見積もりにより、地方の工場に価格で負けてしまう事もあるのではないでしょうか?

自社製品を持つことで高価格の製品を手にする事が出来ます。

問題はマーケティングです。

製品開発には世の中のニーズを捉える力が必要となります。

また、そのニーズに合わせて、製品を創出する能力も問われます。

そして、実際に製品が出来たら、それを販売していかなければなりません。

多くの下請け企業はこの2つの経験がなく、表札や名刺入れを作っては諦める事になります。

現在、販売については沢山のツールが登場しているため、活用次第で売る力は強化出来るでしょう。

例えばクラウドファンディングです。これはテストマーケティングの手法であると考えてください。

少ない費用で、売れるかどうかを試す事が出来ます。

またネットショップやSNSなどを使った告知などで、昔よりも製品を売りやすくなっています。

その代わりライバルも多くいますので、競争は激しいのが難点です。

工場の自社製品についてのマーケティングについては別の記事を書こうと思います。

競争力強化

競争力強化は皆さんがこれまでずっと行ってきた事ですので、確実性が高いです。

工場の生産性向上のための付加価値向上としては、大きな効果は期待できないかもしれません。

戦略としては強みの強化・弱みの克服となります。

強み・弱み・機会・脅威というSWOTと呼ばれる分析手法により、自社の置かれた状況を把握しなおし、

既存のお客様の評価を高め、高く買ってもらう方法を考えていきます。

これまでの支援先で強み・弱みをすぐに答えられる中小製造業は非常に少ないです。

あなたは強み・弱みをすぐに答えられますか?現場はすぐに答えられますか?

強み・弱みを確認する事で自社が伸ばすべき事、克服すべき事が明確になります。

お客様に評価されている事がその強みであれば、強みの強化で評価が高まります。

jお客様が弱みのせいで高価格製品を発注出来ない可能性はありませんか?

お客様は、全ての製品を依頼してくれているわけではありません。

掘り起こしていければ生産性向上の可能性も十分にあります。

工場の強みを引き出す方法についてはまた別の記事でお話していきます。

まとめ

日本の製造業の労働生産性は世界16位です。

上位の国は高付加価値製品を持っている事が分かりました。

工場の生産性向上のためには、高付加価値製品を生み出す必要があります。

そのための戦略は、市場開拓・自社製品開発・競争力強化という3つの方法をお伝えしました。

全て売る力が必要となるものです。

単純に取引先に値上げをお願いできればありがたいですが、そうはいきませんね。

長期的な考え方を持って、新たな取組みをしていく事が工場の生産性向上のために必要な事だと考えます。

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GFC 上村正和
GFC 上村正和 中小企業診断士・日本生産性本部認定経営コンサルタント・1級販売士

職人一筋、木工加工から精密金属加工までを経験。精密金属加工会社では工場長を務める。現在は、中小製造業を対象に現場が活きる経営のサポートを行っている。コンサルティングを中心にのべ100社の支援実績。「日本の製造業をもう一度世界一にしたい!」という想いで支援を続けている。