課題形成によって、
「何に取り組むのか」が明確になっても、
次に多くの現場がつまずくのが、
どこから手を付けるべきか分からないという状態です。
課題が大きすぎる、
要素が多すぎる、
関係者ごとに見ている点が違う。
こうした状態では、改善はなかなか前に進みません。
そこで必要になるのが、
問題を構造化して整理することです。
本記事では、
形成した課題を分解し、
扱える大きさに整理するための
「問題の構造化」の考え方を、
製造現場の実務に即して解説します。
問題を構造化するとはどういうことか
問題を構造化するとは、
課題を細かく分解し、それぞれの関係性を整理することです。
ここで重要なのは、
問題を「たくさん挙げること」でも、
「原因を深掘りすること」でもありません。
構造化の目的は、
問題の全体像を把握し、どこに手を付けるべきかを見える状態にすることです。
一覧化と構造化は別物である
改善の現場では、
問題を付箋やリストで洗い出すことがあります。
これは有効な作業ですが、
それだけでは構造化にはなっていません。
- 問題が並んでいるだけ
- それぞれの関係が分からない
- 重要度の差が見えない
この状態では、
「結局、どれからやるのか」という議論に進めません。
構造化とは、
洗い出した問題を意味のあるまとまりに分け、位置づけを明確にすることです。
なぜ分解しないと改善が止まるのか
課題が「大きすぎる」状態のままでは、
現場は動けません。
例えば、
- 属人化を解消する
- 生産性を向上させる
といった課題は、
方向性としては正しくても、
そのままでは具体的な行動に落とせません。
構造化によって、
- どの部分の属人化なのか
- どの工程・どの作業に影響しているのか
を分けて考えることで、
初めて改善の入口が見えてきます。
構造化は「深掘り」ではない
構造化と原因分析は、
よく混同されますが、役割が異なります。
- 構造化:問題を分けて整理する工程
- 原因分析:一つの要素を掘り下げる工程
構造化の段階で、
「なぜなぜ」を始めてしまうと、
全体を見ないまま一部に入り込んでしまいます。
まずは、
問題を横に並べ、関係を整理する。
深掘りは、その後です。
議論がかみ合わないようなケースでは、構造でいう深さが違っている事が多くあります。
議論を嚙合わせるためにも、構造化が重要です。
構造化のゴール
問題を構造化した結果、
次の状態になっていれば良いと考えます。
- 問題がいくつかの塊に分かれている
- それぞれの範囲が見えている
- 「ここから手を付ける」という候補が見えている
構造化は、
答えを出す工程ではありません。
考える準備を整える工程です。
なぜ問題は「大きすぎる」状態になりやすいのか
問題を構造化しようとするとき、
多くの現場で最初につまずくのが、
問題そのものが大きすぎる状態になっているという点です。
ここでいう「大きすぎる」とは、
重要であるがゆえに、
そのままでは分解や整理ができない状態を指します。
問題を「方向性」で捉えてしまっている
問題が大きくなりやすい代表例が、
問題を方向性の言葉で捉えてしまっているケースです。
- 属人化している
- 生産性が低い
- 品質が安定していない
これらは、
姿とのギャップを大まかに表現した言葉ではありますが、
構造化の出発点としては抽象度が高すぎます。
方向性レベルの問題は、
そのままでは分解の切り口が見えず、
構造化が止まってしまいます。
異なる性質の問題が一つにまとめられている
問題が大きくなるもう一つの理由は、
性質の異なる問題が一つにまとめられていることです。
例えば「属人化している」という問題の中には、
- 作業手順が人によって違う
- 判断基準が言語化されていない
- 教育のやり方が統一されていない
といった、
別々に扱うべき問題が含まれています。
これらを分けずに一つの問題として扱うと、
構造化しようとしても、
どこで区切ればよいのかが分からなくなります。
問題同士の関係を意識しすぎてしまう
現場の問題は、
実際には相互に影響し合っています。
そのため、
- ここだけ切り出しても意味がない
- 全体で考えないと解決しない
と感じてしまい、
問題を分けること自体をためらってしまうケースがあります。
しかし、
影響し合っていることと、
構造として分けて整理できないことは別です。
構造化は、
問題を切り離すためではなく、
関係を整理するために行います。
問題を分解する経験が不足している
多くの現場では、
- 問題を挙げる
- 対策を考える
という流れはあっても、
問題を分解して整理する工程を
意識的に行う機会は多くありません。
その結果、
一つの大きな問題を前にして、
何から考えればよいのか分からない状態が生まれます。
これは能力の問題ではなく、
構造化という工程が共有されていないことが原因です。
大きすぎる問題は構造化できない
問題が大きすぎる状態では、
- 切り口が見えない
- 論点が定まらない
- 次の分析に進めない
という状況になります。
だからこそ、
問題をそのまま扱おうとするのではなく、
分解し、整理できる大きさにすることが
構造化の第一歩になります。
構造化で最初にやるべきこと
問題を構造化しようとすると、
つい「原因は何か」「どう対策するか」を考えたくなります。
しかし、構造化の最初の一手は、そこではありません。
最初にやるべきことは、
問題を“深掘りしない”と決めることです。
いきなり原因分析をしない
構造化と原因分析は、
似ているようで役割がまったく異なります。
- 構造化:問題を分けて整理する工程
- 原因分析:一つの問題を掘り下げる工程
構造化の段階で原因を考え始めると、
一部の問題だけを深く掘ってしまい、
全体像を見失いやすくなります。
まずは、
「なぜ起きているか」ではなく「どんな問題があるか」
に意識を向けます。
問題を横に並べる
構造化の第一歩は、
問題を上下関係や因果関係で捉えるのではなく、
一度、横に並べることです。
- どの工程に関係する問題か
- どの作業に現れている問題か
- どの立場に影響している問題か
こうして並べることで、
問題の広がりや偏りが見えてきます。
この段階では、
重要度や優先順位を決める必要はありません。
問題の境界を意識する
問題を並べる際に意識したいのが、
**それぞれの問題の「範囲」**です。
- どこからどこまでが同じ問題なのか
- 別の問題として切り出すべき部分はどこか
境界を意識することで、
一つの問題に含まれていた要素が分かれ、
扱える大きさになっていきます。
「正解の分け方」を探さない
問題の構造化には、
唯一の正解があるわけではありません。
- 工程で分けてもよい
- 作業内容で分けてもよい
- 人・設備・ルールで分けてもよい
重要なのは、
分けた結果として、考えやすくなっているかどうかです。
正しい構造を作ろうとするよりも、
議論しやすい構造を作ることを優先します。
構造化の時点で決めないこと
構造化の段階では、
次のことを無理に決める必要はありません。
- どれが一番悪いか
- どれを最優先にするか
- どうやって直すか
これらは、
構造化の「次」に行う作業です。
まずは、
問題を整理し、
考える土台を整えることに集中します。
問題を分解する代表的な切り口
問題を構造化する際に重要なのは、
あらかじめ「分ける視点」を持つことです。
切り口がないまま問題を眺めていると、
分解は感覚的になり、
構造として整理できなくなります。
ここでは、
製造現場で使いやすい
問題を分解する代表的な切り口を整理します。
工程で分ける
最も基本的で使いやすい切り口が、
工程ごとに問題を分ける方法です。
- 加工工程で起きている問題
- 組立工程で起きている問題
- 検査工程で起きている問題
- 出荷工程で起きている問題
同じ「不良が多い」という問題でも、
どの工程で発生しているかによって、
意味合いは大きく異なります。
工程で分けることで、
問題の発生場所と関係者が整理されます。
私が支援を行う場合には、まずは工程の流れを把握し、問題の発生点を明確にすることから始めています。
作業内容で分ける
次に有効なのが、
作業の種類に着目して問題を分ける方法です。
- 段取り作業に関わる問題
- 定常作業に関わる問題
- 確認・検査作業に関わる問題
- 例外対応時に起きている問題
同じ工程内であっても、作業内容が違えば、問題の性質も変わります。
この切り口を使うと、
「どの作業に問題が集中しているか」が見えてきます。
把握した工程の流れから、作業の流れへと分解することで、より構造化が進んでいきます。
人・機械 設備・材料・ルールで分ける
問題が複雑な場合は、
視点を切り替えて分けることも有効です。
- 人に起因する問題
- 機械・設備に起因する問題
- 材料に起因する問題
- ルール・仕組みに起因する問題
この切り口は、
問題が属人的なものなのか、
構造的なものなのかを整理するのに役立ちます。
これは生産要素の4Mと呼ばれるもので、現場の人もイメージしやすい構造化の方法です。
時系列で分ける
問題は、
発生しているタイミングで分けることもできます。
- 作業開始時に起きている問題
- 段取り替え時に起きている問題
- 繁忙期に顕在化する問題
- イレギュラー対応時に起きている問題
時間軸で分けることで、特定の条件下で現れる問題が浮かび上がります。
切り口は一つに限定しなくてよい
問題の構造化では、
切り口を一つに決める必要はありません。
- まず工程で分ける
- 次に作業内容で分ける
- さらに人・機械 設備・材料・ルールで見る
というように、
複数の切り口を重ねて整理しても構いません。
重要なのは、
問題が整理され、
次に「どれを深く見るか」を議論できる状態に
なっているかどうかです。
構造化すると「論点」が見える
問題を構造化すると、
単に問題が整理されるだけでなく、
「どこを議論すべきか」 が明確になります。
これは、
改善を前に進めるうえで非常に大きな変化です。
全部を一度に考えなくてよくなる
問題を構造化する前は、
あらゆる問題が一つの塊として見えがちです。
- どれも重要に見える
- どこから手を付けても中途半端になる
- 結局、何も決まらない
構造化によって問題が分かれると、
「今はこの問題を考える」と
論点を限定できるようになります。
これにより、
議論が前に進みやすくなります。
議論すべき問題と、後回しにできる問題が分かれる
問題を分解して並べると、
影響度や緊急度の違いが自然と見えてきます。
- すぐに手を付けるべき問題
- 時間をかけて考える問題
- 他の問題を整理してから扱う問題
この区別がつくことで、
「全部やらなければならない」という
無意識のプレッシャーが減ります。
関係者ごとの役割が見えやすくなる
構造化された問題には、
関係する工程や立場が紐づいています。
- 現場作業者が関わる問題
- 設備担当が関わる問題
- 管理側が関わる問題
そのため、
誰が議論に参加すべきか、
誰に確認が必要かが明確になります。
結果として、
「関係者が揃わずに話が進まない」
といった状況を減らすことができます。
次に深掘りすべき問題が選べるようになる
構造化の目的は、
問題をすべて解決することではありません。
分けた結果として、
- どの問題を次に深掘りするか
- どれを原因分析の対象にするか
を選べる状態になることが重要です。
ここで初めて、
原因分析という次の工程に進む準備が整います。
議論が「感覚」から「整理」に変わる
問題が構造化されていない状態では、
議論はどうしても感覚的になります。
- 何となく大変そう
- 重要そうな気がする
構造化によって問題が整理されると、
議論は「印象」ではなく
整理された情報をもとに進められるようになります。
構造化と原因分析の違い
問題を整理する場面で、
構造化と原因分析は混同されやすい工程です。
しかし、この二つは目的も役割も異なります。
構造化は「全体を整理する工程」
構造化の役割は、
問題を分け、関係性を整理し、全体像を把握することです。
- どのような問題があるのか
- どの問題が、どこに関係しているのか
- どの問題を次に扱うべきか
を見える状態にすることが目的です。
構造化の段階では、
「なぜ起きているのか」までは踏み込みません。
原因分析は「一つを深く掘る工程」
一方、原因分析は、
構造化によって切り出された一つの問題を対象に行います。
- なぜその問題が起きているのか
- どこに根本的な要因があるのか
を掘り下げ、
再発防止や改善につなげるための工程です。
構造化を飛ばして原因分析を始めると、
全体像を見ないまま一部だけを深掘りしてしまい、
的外れな分析になりやすくなります。
この順番が重要である理由
- 構造化 → 問題を整理し、論点を選ぶ
- 原因分析 → 選んだ問題を深掘りする
この順番を守ることで、
分析は意味を持ち、
改善は筋道を持って進みます。
構造化は、
原因分析の前に必ず通るべき工程です。
まとめ
問題を構造化するとは、
問題を分解し、関係性を整理し、
扱える形にすることです。
- 問題が大きすぎると、改善は動かない
- 構造化によって、論点が見える
- どの問題を次に深掘りするかが選べる
構造化は、
答えを出すための工程ではありません。
考える準備を整えるための工程です。
この準備が整って初めて、
次の「原因分析」が意味を持ちます。
次の記事では、
構造化によって選ばれた問題を対象に、原因分析の考え方を整理します。


