ロジカルシンキングという言葉を聞くと、
「小難しい考え方」
「コンサルタントが使う難しい手法」
といった印象を持たれることがあります。
しかし、現場改善におけるロジカルシンキングは、
賢く見せるための技術ではありません。
考えがズレないように整理し、話を前に進めるための考え方です。
現場の議論が噛み合わない、
原因分析が途中で止まる、
対策が場当たり的になる。
こうした状況の多くは、
ロジカルシンキングが不足しているというより、
順番や整理の仕方が共有されていないことが原因です。
本記事では、
一般論としてのロジカルシンキングではなく、
現場改善を進めるうえで
どのような場面で、どのように考えればよいのかを整理します。
これまで解説してきた
「問題の構造化」「原因分析」との関係も踏まえながら、
現場で使えるロジカルシンキングの考え方を整理していきます。
ロジカルシンキングとは何か(現場改善の文脈で)
ロジカルシンキングという言葉は、
一般には「筋道立てて考えること」
「論理的に正しい答えを出すこと」
といった意味で使われることが多くあります。
しかし、
現場改善におけるロジカルシンキングは少し意味が異なります。
ここで求められるのは、
正解を出すことでも、賢さを示すことでもありません。
現場改善でのロジカルシンキングの役割
現場改善の文脈でのロジカルシンキングは、
考えや議論がズレないように整理するための考え方です。
- 話が途中で別の論点に飛ばない
- 結論と理由が入れ替わらない
- 人によって解釈が変わらない
こうした状態をつくることが、
ロジカルシンキングの役割になります。
「論理的に正しい」ことが目的ではない
ロジカルシンキングという言葉から、
「正しいことを言わなければならない」
と感じる人も少なくありません。
しかし現場改善では、
必ずしも一つの正解があるわけではありません。
重要なのは、
- 今、何について話しているのか
- なぜその話になっているのか
が共有されていることです。
ロジカルシンキングは、
正しさを競うためのものではなく、
話を前に進めるための共通言語と捉えると分かりやすくなります。
ロジカル=順番と前提をそろえること
現場改善でのロジカルシンキングを、
一言で表すなら
**「順番と前提をそろえること」**です。
- 何を前提に話しているのか
- 今は問題の話なのか、原因の話なのか
- すでに決まったことと、これから決めることは何か
これらが整理されていれば、
議論は自然とロジカルになります。
逆に、
前提や順番がそろっていない状態では、
どれだけ正しい意見を言っても、
話は噛み合いません。
現場改善においてロジカルシンキングが必要な理由
現場改善は、
一人で完結する仕事ではありません。
- 現場
- 管理者
- 設計・品質・生産技術
立場や視点の違う人同士が、
同じ問題について考え、
意思決定を行う必要があります。
その際に、
考え方の整理軸として機能するのが、
現場改善におけるロジカルシンキングです。
なぜ現場の議論はズレてしまうのか
現場改善の議論がうまく進まないとき、
「意見が対立している」
「考え方が違う」
と感じることがあります。
しかし実際には、
論点そのものがズレているだけ
というケースが少なくありません。
前提が共有されないまま話し始めている
議論がズレる最も典型的な原因は、
前提がそろっていない状態で話が始まることです。
- どの工程の話なのか
- どの期間の話なのか
- 現状の数値なのか、目標の話なのか
これらが共有されていないと、
同じ言葉を使っていても、
それぞれが違うものを思い浮かべてしまいます。
結果として、
話は噛み合わず、
議論が堂々巡りになります。
問題・原因・対策が混ざっている
現場の議論では、
次のような会話がよく起こります。
- 「問題は〇〇だ」
- 「原因は△△だ」
- 「じゃあ□□をやろう」
これらが、
同時に、同じ場で語られることで、
話がズレていきます。
今は
- 問題を整理しているのか
- 原因を考えているのか
- 対策を決めているのか
が曖昧なまま進むと、
ロジカルな議論は成立しません。
事実と意見が切り分けられていない
議論がズレるもう一つの原因は、
事実と意見が混ざってしまうことです。
- 「不良が多い気がする」
- 「たぶん忙しかった」
といった発言は、
意見や感覚であり、
事実とは異なります。
事実と意見が整理されないままでは、
どこからが確認事項で、
どこからが判断なのかが分からなくなります。
話のゴールが共有されていない
議論の目的が曖昧な場合も、
ズレは起きやすくなります。
- 今日は何を決めるのか
- どこまで話せば次に進めるのか
このゴールが共有されていないと、
人によって
「もう十分だ」と感じるタイミングが異なります。
その結果、
「まだ早い」「もう決めるべきだ」
といったズレが生まれます。
ロジカルに考えていないのではなく、整理されていない
ここで重要なのは、
現場の議論がズレる原因は、
論理力が足りないからではない
という点です。
多くの場合、
- 前提
- 論点
- 順番
が整理されていないだけです。
ロジカルシンキングとは、
こうしたズレを防ぐための整理の考え方だと言えます。
ロジカルシンキングは「正しさ」ではなく「整理」
ロジカルシンキングという言葉から、
「正しい意見を言うこと」
「論破すること」
を想像されることがあります。
しかし、
現場改善におけるロジカルシンキングの本質は、
正しさを競うことではありません。
ロジカルシンキングの役割は「見える化」
現場改善におけるロジカルシンキングは、
考えを見える形に整理するための考え方です。
- 今、何の話をしているのか
- どこまで分かっていて、何がまだか
- 次に何を決める必要があるのか
これらが整理されることで、
議論は前に進みます。
ロジカルシンキングは、
答えを出すための技術ではなく、
話を共有するための補助線です。
意見が違っても、整理されていれば前に進める
ロジカルに整理された議論では、
意見が違っても問題になりません。
- どこが違うのか
- なぜ違うのか
が見えるからです。
逆に、
整理されていない議論では、
同じ意見でも
噛み合っていないように感じます。
ロジカルシンキングは、
合意を強制するためのものではなく、
違いを明確にするための考え方でもあります。
現場改善で求められるのは「納得感」
現場改善では、
全員が100%同意する正解を
見つけることはほとんどありません。
それよりも重要なのは、
- なぜその判断に至ったのか
- どこまで分かって決めたのか
が共有されていることです。
ロジカルシンキングは、
この納得感をつくるための整理の技術
として機能します。
話をズラさないために押さえる3つの視点
現場改善の議論がうまくいかない原因の多くは、
意見の違いではなく、
話している論点がズレていることにあります。
ロジカルシンキングを現場で使ううえでは、
次の3つの視点を押さえておくだけで、
議論のズレは大きく減らせます。
今は「何の話」をしているのか
まず確認すべきなのは、
今、何について話しているのかです。
- 問題の話なのか
- 原因の話なのか
- 対策の話なのか
この区別が曖昧なまま進むと、
議論はすぐに噛み合わなくなります。
特に現場では、
問題の話をしている途中で、
自然と対策の話に移ってしまうことが多くあります。
意識的に
「今はどの段階の話か」
を確認することが重要です。
事実と意見が混ざっていないか
次に押さえるべき視点は、
事実と意見の切り分けです。
- 事実:実際に起きていること
- 意見:その事実をどう捉えるか
この2つが混ざると、
話は感覚的になり、
結論が揺れやすくなります。
現場改善では、
まず事実を共有し、
そのうえで意見を出す
という順番が重要です。
前提や条件がそろっているか
三つ目の視点は、
前提や条件がそろっているかです。
- どの工程の話なのか
- どの期間の話なのか
- どの条件下で起きたことなのか
これらが共有されていないと、
同じ言葉を使っていても、
話はズレていきます。
前提をそろえることは、
議論をロジカルにするための
最も基本的な作業です。
3つの視点を確認するだけで議論は整理される
この3つの視点は、
特別な知識や訓練を必要としません。
- 今は何の話か
- 事実と意見は分かれているか
- 前提はそろっているか
この確認を入れるだけで、
議論は驚くほど整理されます。
ロジカルシンキングとは、
難しいフレームワークを使うことではなく、
話を整理するための視点を持つこと
だと言えます。
ロジカルに考えるとは「順番を守る」こと
現場改善でロジカルに考えるとは、
難しい理屈を使うことではありません。
考える順番を守ることです。
この順番が守られていないと、
どれだけ正しい意見が出ても、
議論は整理されません。
飛ばしてはいけない順番がある
現場改善の議論には、
最低限守るべき順番があります。
- まず、何が問題なのか
- 次に、なぜそれが起きているのか
- 最後に、どう対応するか
この順番が入れ替わると、
話は混乱します。
特に多いのが、
問題が十分に整理されていない段階で、
いきなり対策の話に入ってしまうケースです。
順番が崩れると起きる典型的なズレ
順番が守られていない議論では、
次のようなズレが起きやすくなります。
- 問題の認識が人によって違う
- 原因の話と対策の話が混ざる
- 話し合っているのに結論が出ない
これは、
意見の質の問題ではなく、
順番の問題です。
順番が整理されていれば、
議論は自然と前に進みます。
ロジカルシンキングは流れを整えるための考え方
ロジカルシンキングは、
個々の意見を評価するためのものではありません。
- どこから始めて
- どこまで進んでいて
- 次に何を考えるのか
この流れを整えるための
思考のガイドとして機能します。
順番が見えていれば、
「今はまだそこを決める段階ではない」
「その話は次の工程で扱う」
といった判断も、
自然にできるようになります。
順番を守るだけでロジカルになる
ロジカルに考えようと意識しすぎると、
言葉を選びすぎたり、
正しさを気にしすぎたりしてしまいます。
しかし現場改善では、
順番を守るだけで十分ロジカルです。
- 今は何を整理する段階か
- 次に進む条件は何か
これを意識することが、
現場改善に必要なロジカルシンキングの基本です。
ロジカルシンキングは道具であり目的ではない
ロジカルシンキングは、
それ自体が目的になるものではありません。
現場改善において重要なのは、
ロジカルに「見せる」ことでも、
難しい言葉を使うことでもなく、
改善を前に進めることです。
ロジカルであることが止めてしまうこともある
ロジカルに考えようとするあまり、
- 完璧な整理を目指す
- すべてを説明し切ろうとする
と、
かえって議論が進まなくなることがあります。
現場改善では、
考えながら動き、
動きながら修正することが前提です。
ロジカルシンキングは、
その流れを支えるための
補助的な道具として使うことが重要です。
ロジカルシンキングは「共通理解」をつくるために使う
現場改善では、
立場や経験の違う人が集まって議論します。
その中でロジカルシンキングが果たす役割は、
正解を決めることではなく、
共通理解をつくることです。
- 今、どこまで分かっているのか
- 何を前提に判断しているのか
これが共有されていれば、
多少意見が違っても、
改善は前に進みます。
「使いどころ」を間違えないことが大切
ロジカルシンキングは万能ではありません。
- 現場の感覚が必要な場面
- まず動いて確かめるべき場面
では、
細かい整理よりもスピードが優先されることもあります。
大切なのは、
考えを整理すべき場面で、適切に使うことです。
まとめ
現場改善に必要なロジカルシンキングとは、
賢さや正しさを示すためのものではありません。
- 話の論点をズラさない
- 事実と意見を整理する
- 考える順番を守る
こうした基本を押さえることで、
議論は整理され、
改善は前に進みやすくなります。
ロジカルシンキングは、
現場改善を進めるための
思考の土台です。
これまで整理してきた
「問題の捉え方」「原因分析」と組み合わせることで、
より効果的に機能します。


