原因分析は、
製造現場の問題解決において欠かせない工程です。
しかし現実には、
なぜなぜ分析や特性要因図といった手法が、
「書くこと自体が目的」になってしまっている現場も少なくありません。

分析はしているはずなのに、
改善につながらない。
原因を出したつもりでも、
次の行動が決まらない。
こうした状態は、
手法の問題ではなく、
原因分析の位置づけや考え方が整理されていないことから生まれます。

本記事では、
原因分析を単なる作業にしないために、
どのような前提で、
どのような順番で考えるべきかを整理します。

なぜなぜ分析に限らず、
あらゆる分析手法を形骸化させないための考え方を、
これまでの「問題の構造化」までの流れを踏まえて解説します。

原因分析とは何か

原因分析とは、
問題を引き起こしている要因を特定し、改善につなげるための仮説を得る工程です。

ここで重要なのは、
原因分析の目的が
「原因をたくさん出すこと」でも
「手法を正しく使うこと」でもない、
という点です。

原因分析の役割は、
次に何を変えるべきかを判断するための材料をそろえることにあります。


原因分析は「問題解決の途中」にある

原因分析は、
問題解決のスタートでも、ゴールでもありません。

  • 問題を定義する
  • 問題を構造化する
  • 原因を分析する
  • 対策を検討し、実行する

原因分析は、
この流れの途中に位置する工程です。

前段で問題が整理されていなければ、
原因分析は的外れになります。
一方で、
原因分析の結果だけを見ても、
改善は完結しません。


原因分析は「答え」を出す作業ではない

原因分析という言葉から、
「正しい原因を一つ見つけ出す作業」
を想像することがあります。

しかし、現場の問題において、
原因が一つだけとは限りません。

原因分析で得られるのは、
改善につながりそうな仮説です。

  • どこを変えれば効果がありそうか
  • どの要因に手を付けるべきか

を判断するための、
思考の整理が目的になります。


手法は「考え方」を補助する道具にすぎない

なぜなぜ分析や特性要因図などの分析手法は、
原因分析を進めるうえで有効な道具です。

しかし、
手法そのものが原因分析ではありません。

  • 手法を使ったから正しい
  • 書式を埋めたから分析した

という状態では、
改善にはつながりません。

原因分析では、
何を明らかにしたいのか
という目的が先にあり、
その目的を補助するために
手法を使います。


原因分析の質は「前工程」で決まる

原因分析が形骸化する現場では、
共通して前工程が曖昧です。

  • 問題がぼんやりしている
  • 分析対象が定まっていない
  • 構造化を飛ばしている

この状態で、
どれだけ手法を使っても、
分析は浅くなります。

原因分析の質は、
分析そのものよりも、そこに入るまでの準備
によって大きく左右されます。

なぜ分析手法は形骸化してしまうのか

原因分析がうまく機能していない現場では、
「なぜなぜ分析をやっているのに改善につながらない」
「特性要因図を書いたが、その後が続かない」
といった声がよく聞かれます。

こうした状態は、
手法の問題ではありません。
原因分析に入るまでの考え方や順番が整理されていないことが、
形骸化の主な原因です。


手法を使うこと自体が目的になっている

最も多いのが、
分析手法を「やるべき作業」として扱ってしまうケースです。

  • なぜなぜと5回書く
  • 魚骨図の枠を埋める
  • 報告書として提出する

こうした行為自体は間違いではありませんが、
何を明らかにしたいのかが共有されていないと、
分析は形式的な作業になります。

結果として、
「書いたが終わり」
「結論が曖昧」
という状態に陥ります。


分析対象の問題が曖昧なまま始めている

原因分析が形骸化する現場では、
「何を分析しているのか」が曖昧なことが少なくありません。

  • 問題が大きすぎる
  • 複数の問題が混ざっている
  • どこまでを分析対象とするか決まっていない

この状態で分析を始めると、
原因が拡散し、
結論がぼやけてしまいます。

前記事で整理した
問題の構造化を飛ばしてしまうと、
原因分析は成立しにくくなります。


原因と対策を混同してしまう

形骸化のもう一つの典型例が、
原因と対策が混ざってしまうケースです。

  • 教育が足りない
  • 意識が低い
  • チェックを強化する

これらは、
原因のように見えて、
実際には評価や対策の言葉です。

原因分析の段階で
対策を考え始めてしまうと、
本来整理すべき要因が見えなくなります。

これは、思考のジャンプ、対策への飛びつきといった状態です。


「正解の原因」を一つ探そうとしている

原因分析を
「正しい原因を一つ見つける作業」
と捉えてしまうことも、
形骸化の原因になります。

現場の問題は、
複数の要因が重なって起きていることがほとんどです。

一つに絞ろうとすると、
議論が感覚論になり、
納得感のない結論になりがちです。

原因分析は、
どこに手を付けるべきかを判断するための整理
であることを忘れてはいけません。


分析結果をどう使うかが決まっていない

最後に、
分析結果の使い道が曖昧なまま
原因分析を行っているケースもあります。

  • どのレベルの対策につなげるのか
  • 誰が判断し、誰が動くのか

が決まっていないと、
分析結果は宙に浮いてしまいます。

原因分析は、
改善につなげて初めて意味を持つ工程です。

原因分析に入る前に整理すべき前提

原因分析を形骸化させないためには、
分析手法そのものよりも、
分析に入る前の準備が重要になります。

この前提が整理されていない状態で分析を始めると、
どの手法を使っても、
結果は曖昧になりがちです。


どの問題を分析対象にするのか

最初に明確にすべきなのは、
今回の原因分析で扱う問題は何かという点です。

  • 問題は一つに絞られているか
  • すでに構造化され、分解された問題か

ここが曖昧なままでは、
分析は拡散します。

「全体の中のどの問題を深掘りするのか」
を決めることが、
原因分析の出発点です。


分析の範囲はどこまでか

次に整理すべきなのは、
どこまでを分析の対象とするかです。

  • 特定の工程だけを見るのか
  • 特定の作業に限定するのか
  • 一定期間の事象に絞るのか

範囲を決めずに分析を始めると、
原因が無限に出てきてしまいます。

原因分析では、
すべてを明らかにする必要はありません。
今回の改善判断に必要な範囲に絞ることが重要です。


分析で何を判断したいのか

原因分析は、
分析そのものが目的ではありません。

  • どの要因に手を付けるかを判断したいのか
  • 対策の方向性を決めたいのか

分析の目的が明確であれば、
必要な深さや切り口も自然に決まります。

この目的が共有されていないと、
分析は自己満足で終わってしまいます。


分析結果を誰がどう使うのか

原因分析の結果は、
必ず次の判断につながります。

  • 誰が対策を決めるのか
  • 誰が実行を担うのか

ここが決まっていないと、
分析結果は「報告資料」になってしまいます。

原因分析は、
意思決定と行動につなげるための工程です。


この前提が整って初めて分析手法を選ぶ

ここまでの前提が整理されて、
初めて分析手法を選ぶ意味が生まれます。

  • 深く掘る必要があるなら
  • 広く要因を洗い出す必要があるなら
  • データで傾向を見たいなら

手法は、
前提に合わせて選ぶものです。

原因と対策を混同しないための考え方

原因分析が形骸化する現場では、
原因を出しているつもりで、実は対策を並べている
という状態がよく見られます。

この混同が起きると、
分析は早く終わったように見えても、
問題の本質には迫れません。


原因は「起きている理由」、対策は「変える行動」

まず押さえておきたいのは、
原因と対策の役割の違いです。

  • 原因:
    なぜその問題が起きているのかを説明する言葉
  • 対策:
    その原因に対して、何を変えるのかという行動

この違いが曖昧なまま分析を進めると、
議論はすぐに「何をやるか」に流れてしまいます。


対策の言葉が出てきたら立ち止まる

原因分析の場で、
次のような言葉が出てきたら注意が必要です。

  • 教育を強化する
  • チェックを増やす
  • 注意喚起を徹底する

これらは、
原因ではなく対策です。

この段階で対策が出てきたということは、
原因の整理がまだ十分でない
というサインでもあります。

前提が違っている可能性があり、決めつけになっていると捉えたほうが良いでしょう。


評価や感情の言葉は原因にならない

原因として挙げられがちな言葉の中には、
評価や感情を含んだものがあります。

  • 意識が低い
  • 慣れによる油断
  • 注意不足

これらは、
事実を説明しているようで、
実際には説明になっていません。

原因は、
誰が見ても同じ理解になる
再現性のある言葉で表現する必要があります。

自分には理解の出来ないミスに対する責めの要素が強い状態です。


原因は「変えられる前提」で考える

原因分析で出てきた原因が、
「変えられないもの」になっていないかも重要です。

  • 性格の問題
  • 能力の問題

こうした要因は、
改善につながりません。

原因分析では、
仕組み・条件・流れといった、
手を加えられる要素に着目します。


原因を一度「仮説」として扱う

原因分析で出てきた原因は、
確定事項ではありません。

あくまで、
改善につながりそうな仮説として扱います。

  • 本当にこの原因なのか
  • 他にも影響している要因はないか

を検証しながら、
次の対策検討へ進みます。

分析結果を改善につなげるために意識すべきこと

原因分析は、
原因を特定した時点で終わりではありません。
改善につなげて初めて意味を持つ工程です。

そのためには、
分析結果をどう扱うかという視点が欠かせません。


すべての原因に対策を打とうとしない

原因分析を行うと、
複数の原因候補が挙がることが一般的です。

しかし、
挙がったすべてに対策を打とうとすると、

  • 手が回らない
  • 優先順位がつかない
  • どれも中途半端になる

という状態に陥りがちです。

分析結果は、
「どこに手を付けるかを選ぶための材料」
として使います。


効果が見込める原因を選ぶ

原因分析の結果から、
次の観点で原因を選びます。

  • 改善効果が見込めそうか
  • 現場で手を付けられるか
  • 影響範囲はどの程度か

ここで初めて、
対策検討に進む意味が生まれます。

原因分析は、
判断を助けるための工程です。


対策は「小さく試す」前提で考える

分析結果をもとに対策を考える際は、
最初から完璧を目指す必要はありません。

  • 小さく試す
  • 効果を見る
  • 必要に応じて修正する

この前提があることで、
分析結果は現場で活きやすくなります。


原因分析を「一度きり」にしない

原因分析は、
一度やって終わりではありません。

  • 対策の結果を見て
  • 必要なら再度原因を見直す

この繰り返しによって、
問題解決は深まっていきます。

原因分析は、
改善を支える思考の道具として
使い続けるものです。


まとめ

原因分析とは、
問題を引き起こしている要因を整理し、
改善につなげるための仮説を得る工程です。

  • 手法は目的ではなく手段
  • 形骸化の原因は「順番」と「前提」にある
  • 構造化された問題を対象に分析する
  • 原因と対策を混同しない

これらを意識することで、
なぜなぜ分析を含む
あらゆる分析手法は、
意味を持って機能します。

原因分析は、
問題解決のゴールではありません。
次の行動を選ぶための工程です。

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この記事を書いた人

GFC 上村正和
GFC 上村正和 中小企業診断士・日本生産性本部認定経営コンサルタント・1級販売士

職人一筋、木工加工から精密金属加工までを経験。精密金属加工会社では工場長を務める。現在は、中小製造業を対象に現場が活きる経営のサポートを行っている。コンサルティングを中心にのべ100社の支援実績。「日本の製造業をもう一度世界一にしたい!」という想いで支援を続けている。