現場で改善会議をしても、議論が「品質かコストか」で止まってしまう——。
私も工場支援の現場で何度も同じ壁にぶつかりました。
そこで役立ったのがPQCDSME。7つの視点 で抜け漏れをなくすことで、優先順位が明確になり、改善が動き出します。この記事では、現場で使える見方と進め方を、実務のコツと一緒にお伝えします。

PQCDSMEの基本

PQCDSMEとは?

PQCDSMEとは、生産管理の基本フレームワークのひとつで、以下の7つの要素を軸に改善や管理を進める考え方です。

  • Productivity(生産性)
  • Quality(品質)
  • Cost(コスト)
  • Delivery(納期)
  • Safety(安全)
  • Morale(士気)
  • Environment(環境)

従来の「QCD(品質・コスト・納期)」に比べて幅広い視点を持ち、現場改善を多面的に進められる点が特長です。私自身も工場で改善活動を行ってきましたが、この枠組みを使うと「安全や士気」「環境」といった軽視されがちなテーマも整理でき、バランスの良い改善に繋がります。

7つの要素の意味

1. Productivity(生産性)
生産性とはアウトプット÷インプットです。
QCDSMEが改善されるで得られる結果はこの生産性に直結していきます。
少ない投入で多くの付加価値を生み出す事が出来れば生産性向上となります。
現場では「ムリ・ムダ・ムラ」をなくす活動が中心となり、インプットを減らす取り組みとなります。

2. Quality(品質)
製品やサービスが顧客の期待に応えているかを測る基準。品質管理が甘いと顧客離れに直結します。
付加価値の要素であり、同じ時間で綺麗で精度の高い製品が作れれば生産性向上にもかかわってきます。
さらに、作り直しなどが減れば、インプットが減り、生産性向上につながるわけです。

3. Cost(コスト)
製造・提供にかかる費用。無駄なコストを排除しつつ、投資対効果を意識することが重要です。
生産性のインプットに直結する部分です。

4. Delivery(納期)
納期を守ることは顧客の信頼を得る基本。工程管理や在庫の最適化がカギとなります。
特に近年では製品ライフサイクルが短くなっており、短納期ニーズが強まっています。

5. Safety(安全)
事故や不具合を防ぎ、安全に働ける環境を確保すること。安全は効率や品質とも密接に関わります。
人材確保が難しい現在では、不安全状態により採用に苦労したり、離職を検討されてしまう事が増えています。

6. Morale(士気)
従業員のやる気や職場の雰囲気。モチベーションが高いと改善活動も自然に進みます。
実際に私の支援の中でもモチベーションが上がった瞬間に成果につながる事が多くあります。

7. Environment(環境)
企業活動が社会や自然に与える影響。省エネ、廃棄物削減、CSR活動などが含まれます。
近年では、環境配慮が会社のイメージに直結するようになってきました。

QCDとの違いと特徴

QCDは「品質・コスト・納期」という基本指標に限定されますが、PQCDSMEは安全・士気・環境まで含む拡張版です。
例えば、コスト削減を重視するあまり安全を犠牲にしてしまうと、事故や品質問題で結局コスト増に繋がることがあります。
PQCDSMEでは、そのバランスを取りながら改善できるのが大きな利点です。

各要素のポイント解説

生産性(Productivity)

限られた人員・設備をいかに効率的に使うか。現場では段取り改善やレイアウト見直しが典型例です。私の支援先でも、単純に配置を変えるだけで作業時間が20%削減できたケースがあります。

品質(Quality)

品質は「作ってから検査」ではなく「作り込む」ことが基本。測定機器の校正や標準作業書の整備が欠かせません。
顧客クレームを減らすには、現場の小さな不良も見逃さない仕組みが重要です。
品質問題は多品種少量ほど解決が難しい傾向にあります。
ですので、品質のモニタリングをしっかりと続ける事が重要です。

コスト(Cost)

材料費・人件費・間接費などを含めた総コスト管理が必要です。
特に中小企業では「見えないコスト」に注意。
例えば、段取り待ちや探し物の時間は目に見えませんが、積み重なると大きなロスになります。

私が支援先で良くお話しているのは、「加工時間そのものを1分短くすることは難しい!ただし、探すムダは1分削減することは簡単だ」という事です。
皆さんが頑張って磨き上げた加工時間は限界値に来ているので、こういったムダを見つける事が重要です。

納期(Delivery)

納期遵守は信用そのもの。
遅れは一瞬で顧客を失います。工程間のリードタイム短縮や、生産計画の見える化が効果的です。
多品種少量の現場では、生産計画が立てにくいという問題がありますが、朝礼とホワイトボードで情報共有するだけでも効果があります。

また、最近では短納期に価値が生まれるケースも増えています。
短納期対応の場合は特急料金をもらうなどして、利益率を上げる事が出来ます。
このように短納期対応を得意とすることで生まれる利益もあるわけです。

安全(Safety)

労災ゼロは企業の最低条件。
安全教育の徹底だけでなく、危険予知活動(KYT)やヒヤリハットの共有も実効性があります。
「安全第一」はスローガンではなく利益に直結します。
私の支援先でも不安全状態が見られるケースがあり、最優先で改善する項目となります。

士気(Morale)

改善は「人の意欲」に依存します。
上司の一言や評価制度で現場の雰囲気は大きく変わります。
例えば、成果を可視化して皆で共有すると、士気が上がり改善が継続します。

重要な事に挨拶があります。
現場の雰囲気づくりとして挨拶や朝礼を強化することは士気を上げる事に貢献します。
実際に私が支援に伺った時に、挨拶が出来る会社ほど改善意識が高い傾向にあります。

環境(Environment)

持続可能性が求められる時代、環境への配慮は必須です。
省エネルギー機械の導入や廃棄物リサイクルなど、社会的責任を果たす姿勢は取引先からの信頼にも繋がります。
特に電気のつけっぱなしなどは、意識すればすぐに改善出来る事です。

実務で活かすステップ

現状把握と課題整理

まずは「現状を数値化」すること。PQCDSMEの7要素ごとに目標を設定し、課題を見える化します。
目標と現状のギャップが問題であり、それを改善することが課題です。

改善計画の立案と実行

課題ごとに目標と手段を決めて改善を進めます。
例えば「不良率3%削減」「納期遵守率95%」といった具体的な数値を設定し、現場で実行します。
手段・手法を明確にすることで、効果測定をしやすく出来ます。

振り返りと標準化

改善後は必ず振り返り、効果を確認。良い事例は標準化して横展開します。
失敗事例も次回の改善に活かします。
効果が出なかった時に手段・手法を正しく実行していたか?を確認すれば、正しく実行出来ていない事が原因という事が分かります。
もし正しく実行していたのであれば、手段・手法が間違っている事が分かります。
このようにして、現場任せにならない生産管理を実行していきましょう。

定着のためのポイント

教育・評価・情報共有の仕組みをつくることが定着のカギです。
チェックリストや掲示板など、現場で使える仕組みを導入すると継続が容易になります。
数字を追うだけではなく、現場も確認すること・現場を見てなんとなく判断するのではなく、数値と照らし合わせる事が、重要です。

まとめ

PQCDSMEは、QCDをベースに「生産性・安全・士気・環境」まで加えた包括的なフレームワークです。これを活用すれば、効率だけでなく、安全や働きやすさ、環境配慮まで含めた持続可能な改善が可能になります。

製造現場で改善が進まないとき、まずはこの7つの視点で課題を整理してみてください。必ずヒントが見つかります。

「現場をもっと良くしたい!」ならGFCにお任せください!

    • 「実家の工場を継ぐ事に不安がある・・・」

    • 「現場が改善を進めてくれない・・・」

    • 「工場が散らかっていて作業性が悪い・・・」

    • 「ミスが多く、材料をムダにしてしまう・・・」

そんな悩みがある方は無料診断をご利用ください!

factory-consulting正方形バナー

中小製造に精通したの中小企業診断士が無料診断にお伺いします。

無料診断をご希望するかたはこちらから、ご質問等の問い合わせこちらから

整理・整頓でお悩みなら画像をクリック

1day2Sバナー

この記事を書いた人

GFC 上村正和
GFC 上村正和 中小企業診断士・日本生産性本部認定経営コンサルタント・1級販売士

職人一筋、木工加工から精密金属加工までを経験。精密金属加工会社では工場長を務める。現在は、中小製造業を対象に現場が活きる経営のサポートを行っている。コンサルティングを中心にのべ100社の支援実績。「日本の製造業をもう一度世界一にしたい!」という想いで支援を続けている。